★★竹下和男著『”弁当の日”がやってきた』(自然食通信社から全4冊)が、新潮社の雑誌『考える人』web版http://kangaeruhito.jp/
「お弁当はメディアである――ということに関して言うと、本書で初めて出会った名文があります。それは2001年、香川県 綾川町の滝宮小学校で始まった「弁当の日」という試みがもたらした成果です。「弁当の日」は今年3月26日時点で、全国1807校で実施されているといい ますから、この文章もよく知られているのかもしれません。私は初めてだったので、驚きました。
「弁 当の日」の大切なルールは、「親が手伝わない」「子どもだけ(自分)でつくる」ことだそうです。献立作り、買い出し、調理、弁当詰め、片づけまで、全部や るのは子ども自身。「子どもが早朝に厨房に立ち、あれこれと試しながら手を動かすことこそが、『弁当の日』が目指す『学び』の源泉だ」という考えが基本に あります。
もっとも昨今は、「子どもの貧困」が深刻な社会問題になっています。この試み自体に異論がないわけではないようです。持ち寄ったお弁当を子どもたちがお 互いに「見せっこ」する中で、それぞれの家庭環境の差が露呈してしまう――実際、お弁当を作って持ってこれない児童が、その日に学校を休むという事態も起 きています。
〈これに対して、「弁当の日」をはじめた竹下和男(滝宮小学校校長・当時)は、「『弁当の日』に欠席 したという事実は、その子が社会(親や教師、地域の大人たち、そして仲間たち)に突きつけたメッセージ」なのだと言う。子どもたちのおべんとうづくりを介 して、大人たちを成長させる。それによって、健やかな家庭環境をつくろうという呼びかけでもあるのだ〉
〈食事を作ることの大変さがわかり、家族をありがたく思った人は、優しい人です。
手順良くできた人は、給料をもらう仕事についたときにも、仕事の段取りのいい人です。
食材がそろわなかったり、調理を失敗したときに、
献立の変更ができた人は工夫できる人です。
友達や家族の調理のようすを見て、ひとつでも技を盗めた人は、自ら学ぶ人です。
かすかな味の違いに調味料や隠し味を見抜けた人は、自分の感性を磨ける人です。
旬の野菜や魚の、色彩・香り・触感・味わいを楽しめた人は、心豊かな人です。
一粒の米、一個の白菜。一本の大根の中にも「命」を感じた人は、思いやりのある人です。
スーパーの棚に並んだ食材の値段や賞味期限や原材料や産地を確認できた人は、賢い人です。
食材が弁当箱に納まるまでの道のりに、たくさんの働く人を思い描けた人は、想像力のある人です。
自分の弁当を「おいしい」と感じ「うれしい」と思った人は、幸せな人生が送れる人です。
シャケの切り身に、生きていた姿を想像して「ごめん」が言えた人は、情け深い人です。
登下校の道すがら、稲や野菜が育っていくのをうれしく感じた人は、慈しむ心のある人です。
「あるもので作る」「できたものを食べる」ことができた人は、たくましい人です。
「弁当の日」で仲間が増えた人、友達を見直した人は、人と共に生きていける人です。
調理をしながら、トレイやパックのゴミの多さに驚いた人は、社会をよくしていける人です。
中国野菜の安さを不思議に思った人は、世界をよくしていける人です。
自分が作った料理を喜んで食べる家族を見るのが好きな人は、人に好かれる人です。
家族が弁当作りを手伝ってくれそうになるのを断れた人は、独り立ちしていく力のある人です。
「いただきます」「ごちそうさま」が言えた人は、感謝の気持ちを忘れない人です。
家族が揃って食事をすることを楽しいと感じた人は、家族の愛に包まれた人です。
滝宮小学校の先生たちは、こんな人たちに成長してほしくって2年間取り組んできました。
おめでとう、これであなたたちは「弁当の日」をりっぱに卒業できました〉
『この式辞にはいま世界で、日本で問題とされているテーマが、ぎゅっと凝縮されているといっても過言ではありません。
雑誌編集者を奮い立たせる“お弁当力”を見せつけられた気がします。』
「考える人」編集長 河野通和(こうのみちかず)
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