昼めし日記


2010年 1月15日

  昼めし献立 

    • ライ麦パン(ドイツパンの店 吉祥寺・リンデ)
    • ディップ2種=人参・サワークリーム・ゆで卵・
      オリーブ/リンゴ・人参・サツマイモ・味噌

    • 温サラダ2種=大根・カシューナッツ・アーモンド+塩・胡麻油/小松菜・ジャコ天・白菜キムチ+醤油・胡麻油
    • 塩味スープ(大根・ジャコ天・蕪間引き菜)


☆昼飯コラム☆

焼き菓子がこんなにもおいしいなんて

~惚れ惚れします、オーボン・ヴュータンのお菓子~

 久しぶりに買ったオーボンヴュータンのヌガー。自分だけのちょっと秘密めいた楽しみが詰まっているような小さな姿が愛らしい。本郷で長年入り浸っている喫茶店の前マスターから弟さんのお店と聞いていたのだけれど、初めてお店に入ったのはそれから7~8年もたってから。真っ先に目に飛び込んできたのがこのお菓子と、さざれ石のような姿をしたプラリネ(らしいというのも最近知りました。ワインも洋菓子も名前がちっとも覚えられん!)。
 それまで、デパートに出ている名の通った菓子店のや、たまに入った洋菓子店で焼き菓子を買っても、今度またぜひと いうほどのおいしさに出会ったことがなく、こんなものなのかと焼き菓子類には期待しなくなっていたのだけれど、この小さな菓子たちの、感覚の扉をつぎつぎノックされるようなおいしさの攻勢に思いっきり先入観をひっくりかえされるという心地いい衝撃を味わうことに。たった1個の菓子に詰め込まれた甘さのエッセンスがもたらしてくれる幸福感に、いっしょに食べた事務所のスタッフともども、うっとりと吐息をもらしました。
 昨年秋に出版されたオーナーパティシエ、河田勝彦さんの著書『伝統=ベーシックこそ新しい~オーボンヴュータンのパティシエ魂~』(朝日新聞出版)が話題を呼んでいます。自分の進む道を見失いそうになるなど悩みながらも、実力ある菓子職人、料理人たちから貪欲に吸収しつづけたフランスでの若き修行時代から、日本の洋菓子の頂点にたつ今日までが生き生きと語られています。小麦、ナッツ、卵、果物、砂糖といった限られた素材の組み合わせから素材のもつ味の可能性を存分に引き出す丁寧な作業を通して、千変万化のおいしさを生み出す、志高いプロフェッショナルの仕事に賭ける情熱と、愚直なまでの生き方。
 焼き菓子といってもデコレーションケーキほどの大きさのものから、ひと口か2口で食べられるくらいの大きさの、のものまで多彩だけど、ひとつひとつ、どれをとっても(といっても100種類を超えるらしい焼き菓子のなかから、食べたのはせいぜい15種類くらい…)、違ったおいしさに仕上げられていて、ハッとさせられるのです。黄金率のような、糖度65%~70%という数字から半端じゃない甘さを想像すると、口に含んで感じる甘さにはいささかの押しつけがましさも、くどさもなく、ついつい幾つも手を伸ばしそうに。お菓子にこんな言い方は変かもしれないが、もちろん、ケーキも尋常じゃなくおいしい。たまぁ~に、本物の贅沢を味わいたい気持ちになったら、はるばる出かけていっても決して失望しませんよ。それにしても「甘味」って奥が深いんだなあ。
「すべては、おいしさのために」―、本文のどこかにあった河田さんのことば。お客さんが食べて「おいしい」と言ってくれる、そのことのために菓子づくりのさらなる高みをめざしていく。どんな仕事にも通じることと、襟を正す気持ちにもなります。

胡麻油、オリーブ油、いい物を少し使っておいしさアップ

 池袋・東武デパートの地下食品売り場でドイツパンの店を見つけました。「リンデ」といって本店は吉祥寺とのこと。ライ麦100パーセントのパン2種と、ライ麦と全粒小麦のパンです。いずれもサワー種で発酵させている酸味のやや勝ったガッシリとしたパン。熟成}チーズやサワークリームベースのディップなどととてもいい相性です。
旭川・麦々堂のパンに惚れ込んでいるのだけれど、よそのはどんな味かしら…?と、ちょっと寄り道。「ロッゲンフォルコンブロート」ずしっと持ち重りのするレンガのようなライ麦パン。見た目は愛想のない姿なれど、軽くトーストするとむちっとした噛み心地とライ麦のワイルドな酸味がじわり。日本だったら白米に対する雑穀。なかでも地味な稗・高黍というところ。40年近く前、明治屋で輸入のもの(真空パックだった)を見つけて以来、質実なドイツのイメージぴったりだわなどと思いながら、独特の酸味に鷲づかみにされてしまい、時々買い込んでいました。ここの店のも、なかなかおいしいです。
あわせて、ディップを考えてみます。
 人参をたっぷりすりおろして、サワークリームとゆで卵を刻んで混ぜ合わせます。塩とカイエンヌペッパーで味と香りづけ。オリーブの実があったのでそれも加えて。
 もう1種類は、すりおろしたリンゴ、これもたっぷり主役級で。そこにすりおろし人参、サツマイモ、味噌、隠し味にターメリックを振って煮詰めたもの。甘さが気になったらレモンやライムの汁を加えても。

温サラダは、短冊に切った大根と、小松菜で。
大根、小松菜をいっしょにさっと蒸して、小松菜は火が通ったらすぐに引き上げ、大根は火を止め、鍋のふたをして20秒ほどおきます。
砕いたナッツ類と大根を合わせ、上等な胡麻油をほんの少したらして全体にからめ、塩を
ふる。ゴマ油と塩だけで味わうというのは、韓国に留学していた友人が帰国したときに、牛肉を焼いたのをこうして出してくれたのをご馳走になったのが初体験。なんにでも醤油を使いがちなので、それがとても新鮮でしたね。韓国の漬物ナムルのおいしさも塩とゴマ油がうまく使われているからかな。小松菜のほうには、ジャコ天(いただきもの)と白菜キムチを刻んで酢醤油を混ぜ合わせ、こちらもごま油で風味づけ。
値段が高めでも、いい油を備えておくと、ほんの少量でおいしさが格段にアップしますよ。
スープは鰹節のだしで。長葱、小松菜、ジャコ天を具に、塩・胡椒で味つけ。仕上げに針生姜をしのばせて。
本日のお茶

薬草茶(ドクダミ、ヨモギ、玉葱の皮…外側の
茶色くなった皮を溜めておきます)

                                   料理人:よこやま


2010年 1月13日

  昼めし献立 

  • リゾット
  • ひよこ豆と根菜のトマトソース煮
  • ナッツ入りキャベツと春菊の温サラダ
  • スープ(大根、レタス、ジャコ天)


☆昼飯コラム☆

焼き菓子がこんなにもおいしいなんて

~惚れ惚れします、オーボン・ヴュータンのお菓子~

 久しぶりに買ったオーボンヴュータンのヌガー。自分だけのちょっと秘密めいた楽しみが詰まって
いるような小さな姿が愛らしい。本郷で長年入り浸っている喫茶店の前マスターから弟さんのお店と
聞いていたのだけれど、初めてお店に入ったのはそれから7~8年もたってから。真っ先に目に飛び
込んできたのがこのお菓子と、さざれ石のような姿をしたプラリネ(らしいというのも最近知りまし
た。ワインも洋菓子も名前がちっとも覚えられん!)。
 それまで、デパートに出ている名の通った菓子店のや、たまに入った洋菓子店で焼き菓子を買っても、
今度またぜひと いうほどのおいしさに出会ったことがなく、こんなものなのかと焼き菓子類には期待
しなくなっていたのだけれど、この小さな菓子たちの、感覚の扉をつぎつぎノックされるようなおいし
さの攻勢に思いっきり先入観をひっくりかえされるという心地いい衝撃を味わうことに。たった1個の
菓子に詰め込まれた甘さのエッセンスがもたらしてくれる幸福感に、いっしょに食べた事務所のスタッ
フともども、うっとりと吐息をもらしました。
 昨年秋に出版されたオーナーパティシエ、河田勝彦さんの著書『伝統=ベーシックこそ新しい~オー
ボンヴュータンのパティシエ魂~』(朝日新聞出版)が話題を呼んでいます。自分の進む道を見失いそ
うになるなど悩みながらも、実力ある菓子職人、料理人たちから貪欲に吸収しつづけたフランスでの若
き修行時代から、日本の洋菓子の頂点にたつ今日までが生き生きと語られています。小麦、ナッツ、卵、
果物、砂糖といった限られた素材の組み合わせから素材のもつ味の可能性を存分に引き出す丁寧な作業
を通して、千変万化のおいしさを生み出す、志高いプロフェッショナルの仕事に賭ける情熱と、愚直な
までの生き方。
 焼き菓子といってもデコレーションケーキほどの大きさのものから、ひと口か2口で食べられるくら
いの大きさの、のものまで多彩だけど、ひとつひとつ、どれをとっても(といっても100種類を超え
るらしい焼き菓子のなかから、食べたのはせいぜい15種類くらい…)、違ったおいしさに仕上げられ
ていて、ハッとさせられるのです。黄金率のような、糖度65%~70%という数字から半端じゃない
甘さを想像すると、口に含んで感じる甘さにはいささかの押しつけがましさも、くどさもなく、ついつ
い幾つも手を伸ばしそうに。お菓子にこんな言い方は変かもしれないが、もちろん、ケーキも尋常じゃ

なくおいしい。たまぁ~に、本物の贅沢を味わいたい気持ちになったら、はるばる出かけていっても決
して失望しませんよ。それにしても「甘味」って奥が深いんだなあ。
「すべては、おいしさのために」―、本文のどこかにあった河田さんのことば。お客さんが食べて「お
いしい」と言ってくれる、そのことのために菓子づくりのさらなる高みをめざしていく。どんな仕事に
も通じることと、襟を正す気持ちにもなります。

ひさびさに、ひよこ豆を煮ました

 ホンモスあるいはホムスなどと呼んで、イスラム諸国では薄焼きパンとセットで出てくるひよこ豆のペースト。これがすんごくおいしい。ベイルートに数日滞在した折、ホテルでも、街の食堂でも必ずといっていいほど出てきて、ひよこ豆ってなんて美味しいんだろうと、感激しどおしでした。
初めてひよこ豆を知ったのは、高田の馬場に店を開いたバングラデシュのカレー屋さんで「チャナ豆」カレーのメニューを見たとき。もう25年も前のこと。エスニック料理が少しずつ紹介されはじめたころでもありました。こんなにおいしい豆があるんだと、すっかり夢中になり、それ以来、上野のエスニック食材点で、アジアの人たちに混じって時どき買い物するのも楽しみのひとつに。こうした店では、皮をとって挽き割りにしたひよこ豆も売られていますが、たぶんこちらがホンモスやはスープ状に煮込んだりするのに使われるのではないかと。
常備しているのは皮付きの豆。半日ほど水に浸けて煮るのですが、大豆よりずっと早く煮えます。インゲンやエンドウ豆に近いかな。
これをたくさん煮て、いろんな料理に使います。
今日は、ミネストローネの汁なしといった感じの煮物に。
オリーブ油を鍋で温め、カルダモン、シナモンスティック、ローレルなどを軽く炒めたところに玉葱、人参、ジャガイモなどを入れて炒め、スープ(鶏ガラがあった)、トマトピューレ、塩、胡椒を入れて煮込み、味が全体にしみれば出来上がり。

ここのところ、せっせと大根、白菜を消化していたら、キャベツにまで手が回らず、「失礼しました!」状態に。蒸してカサを減らしてキャベツまとめ食い、といきましょう。
蒸したキャベツに刻んでつぶしたオリーブの実を混ぜ、オリーブ油、塩で和えます。春菊も蒸して、こちらはカシューナッツとアーモンドを刻んだのを混ぜて同様にオリーブ油と塩で和え、どちらもバルサミコ酢に醤油少々混ぜ合わせたものを回しかけて。
バルサミコ酢+醤油のソースは、オリーブ油を使った料理を広めている木暮剛さんに
お聞きして、さっそく試してみたら、これがいけますねえ。

バターでスライスした玉葱を炒めたところに小麦粉を混ぜあわせ、牛乳を少しずつ加えてゆるめのホワイトソースをつくったところに、バターを少し入れてやや固めに炊いた
ご飯を投入、チーズを加えて混ぜ合わせただけのリゾットをインスタントにつくってみました。

本日のお茶

薬草茶(ドクダミ、ヨモギ、玉葱の皮…外側の
茶色くなった皮を溜めておきます)

                                   料理人:よこやま



2010年 1月7日

  昼めしの献立 

    • すりおろし人参炊き込みごはん
    • 吸い物(豆腐、長葱、油揚げ)
    • 芋三種とブロッコリーのスピードクリーム煮
    • 葱入り卵焼き
    • 「野の扉」自家製白菜漬け


☆昼飯コラム☆

焼き菓子がこんなにもおいしいなんて

~惚れ惚れします、オーボン・ヴュータンのお菓子~

 久しぶりに買ったオーボンヴュータンのヌガー。自分だけのちょっと秘密めいた楽しみが詰まっているような小さな姿が愛らしい。本郷で長年入り浸っている喫茶店の前マスターから弟さんのお店と聞いていたのだけれど、初めてお店に入ったのはそれから7~8年もたってから。真っ先に目に飛び込んできたのがこのお菓子と、さざれ石のような姿をしたプラリネ(らしいというのも最近知りました。ワインも洋菓子も名前がちっとも覚えられん!)。
 それまで、デパートに出ている名の通った菓子店のや、たまに入った洋菓子店で焼き菓子を買っても、今度またぜひと いうほどのおいしさに出会ったことがなく、こんなものなのかと焼き菓子類には期待しなくなっていたのだけれど、この小さな菓子たちの、感覚の扉をつぎつぎノックされるようなおいしさの攻勢に思いっきり先入観をひっくりかえされるという心地いい衝撃を味わうことに。たった1個の菓子に詰め込まれた甘さのエッセンスがもたらしてくれる幸福感に、いっしょに食べた事務所のスタッフともども、うっとりと吐息をもらしました。
 昨年秋に出版されたオーナーパティシエ、河田勝彦さんの著書『伝統=ベーシックこそ新しい~オーボンヴュータンのパティシエ魂~』(朝日新聞出版)が話題を呼んでいます。自分の進む道を見失いそうになるなど悩みながらも、実力ある菓子職人、料理人たちから貪欲に吸収しつづけたフランスでの若き修行時代から、日本の洋菓子の頂点にたつ今日までが生き生きと語られています。小麦、ナッツ、卵、果物、砂糖といった限られた素材の組み合わせから素材のもつ味の可能性を存分に引き出す丁寧な作業を通して、千変万化のおいしさを生み出す、志高いプロフェッショナルの仕事に賭ける情熱と、愚直なまでの生き方。
 焼き菓子といってもデコレーションケーキほどの大きさのものから、ひと口か2口で食べられるくらいの大きさの、のものまで多彩だけど、ひとつひとつ、どれをとっても(といっても100種類を超えるらしい焼き菓子のなかから、食べたのはせいぜい15種類くらい…)、違ったおいしさに仕上げられていて、ハッとさせられるのです。黄金率のような、糖度65%~70%という数字から半端じゃない甘さを想像すると、口に含んで感じる甘さにはいささかの押しつけがましさも、くどさもなく、ついつい幾つも手を伸ばしそうに。お菓子にこんな言い方は変かもしれないが、もちろん、ケーキも尋常じゃなくおいしい。たまぁ~に、本物の贅沢を味わいたい気持ちになったら、はるばる出かけていっても決して失望しませんよ。それにしても「甘味」って奥が深いんだなあ。
「すべては、おいしさのために」―、本文のどこかにあった河田さんのことば。お客さんが食べて「おいしい」と言ってくれる、そのことのために菓子づくりのさらなる高みをめざしていく。どんな仕事にも通じることと、襟を正す気持ちにもなります。

冬越しの野菜に囲まれあったか気分

 明けましておめでとうございます。
 暮れにインターネットサーバーの容量を増やす手続きを終えたあと、移行のためのさまざまなセッティングに手間取り、年が明けてからもホームページのあちらこちらと穴あき状態になってしまい、右往左往していました。休み中にホームページを覗いてくださった方たちも驚かれたと思います。どうにか復旧できましたが、まだ見落としがあるかもしれません。お気づきのことなど、ご指摘くださいませ。
年始めですので、アクティブなホームページをと、いささか怪しげな抱負を掲げて新年のスタートを切ることにいたしましょう。

 大不況! が続きます。そのなかでも出版は沈下が激しく、修復困難な「構造不況」下にありますが、つつましさにかけては創業以来胸を張って(ゴホ!)きている自然食通信社です。小さな無数の生き物に支えられた豊かな土から農家の方たちが育てたいのちの力あふれる野菜を原動力に、ていねいな本作りを心がけていきたいと思います。
 冷え込む早朝の畑から取り出された野の扉の初荷野菜が届きました。
 まずは事務所で年を越したサツマイモと届いたばかりの里芋、山芋のイモ類3種であったかいクリーム煮を。といっても実はほとんど煮込まない和えものといってもいいようなスピード煮です。やはり暮れに届いた鶏さんのガラでとったスープ少々でこの3種の芋を10分ほど蒸し煮するあいだに、バター、小麦粉、牛乳でホワイトソースをつくり、みずみずしいブロッコリーも加えて混ぜ合わせます。寒さに耐えて甘みが増した根菜のおいしさは格別。この季節ならではのおいしさです。味つけは塩コショウで。
 

卵焼きはきのう残ったのを温めて、葱ソースをかけます。
このソース、実は、熊谷喜八さん考案で、毎日新聞の家庭欄で紹介されていたものを、換
骨堕胎。ありものソースにしちゃいました。胡麻油を低温に熱したところに万能葱(忘年会の料理で残ったもの)をたっぷり入れて炒めていき、あら摺りした中華素材の山椒、塩で味付け、仕上げに醤油で香りづけしたもの。熊谷さんのはナンプラーやオイスター油なども加えてもっと奥行きのあるソースになっているのですが。すりおろした山芋、小口切りした葱(こちらもたっぷり)入れた卵焼きにこのソースをかけます。

人参のストックが増えてきて、うれしい。この日は人参をすりおろしてご飯に炊き込みます。ごく少量の塩だけの味つけ。すりおろすと一気にかさが減ってたくさん食べられるし、カロチンの赤ってきれいでそれだけで気持ちが浮き立ちます。甘味が増した冬の人参はほんの少しの塩でさらに甘く。これはおすすめ! 

豆腐、長葱、油揚げと定番材料の吸い物です。塩味ベースで、香りづけに醤油を少々。

本日のお茶

薬草茶(ドクダミ、ヨモギ、玉葱の皮…外側の
茶色くなった皮を溜めておきます)

                                   料理人:よこやま


2009年 12月9日

  昼めしの献立 

    • すりおろし人参入りピラフ
    • 大豆と大根のトマトソース煮
    • 蕪とキャベツ、人参のクリーム煮
鶏肉がやってきた

 卵を少ししか産まなくなった鶏を肉にしますよと、野の扉からお知らせがあって
数日のち、胸、腿、ササミ、手羽と、1羽まるごと解体された鶏さんが、ガラの
なかにきれいに収まり、野菜とともに届いた。
 臭みもなく、日持ちしてくれるこの肉はずぼらな料理人にとってはありがたい。
手羽や皮の部分を少し放り込んだだけで濃厚なだしがとれるし、ガラは時間の融
通が効くときに長葱や玉葱の皮や切れっぱしとコトコト煮込んでだしをとってお
く。このだしで大豆やインゲン豆なんか煮たら、いくらでも箸がすすみます。
 海が身近だった環境で育った子ども時代は野菜と魚の食卓だったし、野菜も地
元でとれる新鮮なものが八百屋にならぶのがあたりまえの時代で、野菜本来のお
いしさをからだが記憶している世代といえるかもしれない。
 昭和30年代半ば、両親が共稼ぎしても我が家の暮らしはやりくりがたいへん
だったようで、親類の農家が当時はまだ珍しかった孵卵器でかえしていたヒヨコ
を30羽ほど譲ってもらい、借家の裏庭に金網で鶏小屋を建てて飼い始めた。そ
のうち卵を産むようになって、表通りの八百屋さんが時々買いに来たりしていた
が、少しはわが家の経済も潤ったのかしら。当時、卵1個25円くらいで店で売
られていたと記憶している。八百屋にはいくらくらいで卸していたのだろうか。
 一人暮らしをするようになってから、これまでに鶏、豚、牛、ラムなどひと通
りの肉料理はたまに自分でも作り、外食もしたけれど、水っぽかったり、臭いが
気になったりで、売り場からは足が遠のくばかり。
 数年前から毎週届けてもらうようになった野の扉の野菜がありがたくおいしく、
時々、飼い猫と魚を分け合うといった暮らしで、肉料理のおいしさもわかるけど、
肉に執着なく、肉料理があまり身につかなかったのはちょっと惜しいかな。

すりおろして、煮込んで…人参の赤色を満喫

すりおろした人参の色がきれいで、ときどきサラダの仕上げに散らしたり、マヨネーズにたっぷり混ぜたりといろんな使い方をしています。
本日は、ピラフにたっぷり混ぜ込んで。レーズンをトッピングに。砕いたナッツ類やオリーブの実を炊き込んでも。
若い頃は、料理本に載ってるとおりに一度はやったものだけど、いつのころからか、たいていの料理は手抜き、いい加減“自分流”に。ピラフもご飯を炊くときにバターをひとかけらと、塩、胡椒をするだけ。簡単でおいしい。
人参は最初から炊き込むことが多いかな。でも、あ、忘れた! となっても慌てなくってだいじょうぶ。電気釜のスイッチが切れたところでご飯の上にのっけたら。それでもオッケー。

大豆を煮るときはだいたい2カップくらい用意して、たっぷりつくります。大豆をたっぷりの水にひたして、半日くらいおいて膨らんだところで火にかけてとろとろと弱火でやわらかくなるまで煮たら、これを素材にしばらくお豆さんレシピがフル回転。
コンニャク、人参、牛蒡などと醤油味に煮てよし、ヒジキと煮てもよし。ミネストローネに入れれば、さらにスープにコクが加わるし。煮くずれしにくくって扱いやすい大豆は活躍場面に事欠かないというところ。事務所ではサラダにも大活躍で、ひよこ豆の向こうを張っています。きょうは、大根、人参といっしょにトマトソースで煮みました。

外側だけがほんのり薄紫色で、中身の輝くばかりの白とのコントラストが美しい蕪も晩秋から野菜ボックスに入ってきています。火を通すと紫の色が薄まるのが惜しいけれど、丸々と育った冬の蕪は甘みがのって煮込みにしてもたまらなおいしさ。これと、やはり大ぶりの人参、キャベツとクリーム煮に。ホワイトソースは作らず、最後に小麦粉を牛乳に溶かして混ぜ合わせれば、とろりとした煮込みに仕上がります。

本日のお茶

薬草茶(ドクダミ、ヨモギ、玉葱の皮…外側の
茶色くなった皮を溜めておきます)

                                   料理人:よこやま


2009年 12月1日

  昼めしの献立 

    • サツマイモ入りごはん
    • キャベツと玉葱の温サラダ
    • 大根のソテー(味噌と粒マスタードのたれと)
    • 味噌汁(白菜と里芋、油揚げ)
田舎にはなかった食べもの

1. チリメンジャコ
2. 山椒
「なかった」というより、食べる文化がなかったということでしょうね。どちらも京都、大阪など関西では普通に食卓にのぼっていたようですが、日本中の食べものが集まる東京に住むようになって出会った食材のひとつ。
上京後、身元引受人になってくださった方が神戸のご出身だったこともあって、ご実家から季節ごとに、京都の筍、丹波のつくね芋、黒豆、山椒の白醤油煮など届くたびに呼び出しがかかり、大ぶりでアクの少ない上品な筍を庭の山椒の若芽で木の芽(山椒のこと)和えにしたものをいただいたりして、生まれて初めての山椒の香りやしゅわしゅわと口中にひろがる独特の辛味などに新鮮な衝撃をうけたことを、季節がめぐってくるたび思い出します。
童話『赤い蝋燭』が遠い記憶に残る同県人の作家、小川未明の作品で描写される海沿いの町や村の風景そのまま、低くたれこめる冬の空から降る雪も、みっしりと重く、食べものだけでなく何もかも湿り気を帯びた風土で育ったからか、新しい地での食体験は軽やかで、チリメンジャコと山椒の青い実を薄口醤油で上品に煮あげた佃煮(というのは関東風の言い方ですが)にはすっかりはまって、自分でもよく作るようになりました。今では東京でもデパートなどでいつでも手に入るようになりましたが。台所の棚の隅にこれがあると、なんだか安心するんですよね。
写真は、たまに行く居酒屋のママさんからいただいた、京都のチリメン山椒煮。まだ眺めて楽しんでいるところです。

とろり熱々の蒸し焼き大根のたれは…?

ジャガイモ、里芋、サツマイモ、大和芋といった芋類が続々と届くようになって、からだもこころも
あったかさを求める季節になったんだなあと、しみじみ。

厚めにいちょう切りにした大根を、油を熱したフライパンで蒸し焼きに。途中でいちど裏返して。
10分程度で十分火が通るので器に移してたれをそえます。以外に時間もとらないから、木枯らし
吹く夜には燗酒のあてにも。
大根に添えるたれは、味噌、酒、砂糖またはみりんを加えて少し煮詰め、粒マスタードを味噌の量の
3分の1くらい、たっぷり混ぜ合わせて。

キャベツと玉葱の温サラダ

<材料>キャベツ、玉葱、紫キャベツ、ドレッシング用に人参、ブルーチーズ

キャベツは根元から離さないように包丁を入れ、玉葱は輪切りに。玉葱も火が通ると辛みがとれて、いくらでもお腹に納まりそう。紫キャベツは千切りに(こちらは蒸さず生のままで)。つやつやと紫色に輝いて目を楽しませてくれます。
人参をすりおろし、酢、塩、胡椒、オリーブ油と、千切るか包丁で粗く刻んだブルーチーズを混ぜ合わせてドレッシングをつくり、蒸したキャベツ、玉葱を皿に盛り、紫キャベツを添えて、ドレッシングをかける。

ごはんはサツマイモ入り。サツマイモは少量の油で表面がからりとするくらいにさっと火を通し、炊き上がり直前にご飯の上にのせて蒸し上げます。少量の塩を加えて。

本日のお茶

薬草茶(ドクダミ、ヨモギ、玉葱の皮…外側の茶色くなった皮を溜めておきます)

                                   料理人:よこやま


2009年 10月8日

昼めしの献立 

    • 大根、人参、ゴボウ、鶏もも肉のうま煮
    • 秋茄子と、小松菜の温サラダ(ニンニク風味)
    • 新生姜と枝豆のご飯
    • 吸い物(水菜と椎茸、卵)
猫の好物、エノコロ草も枯れて秋の気配

猫の好きなもの。順当なところでは、まずは生きのいい魚。飼い主のおすそ分けと言いたいところだけれど、一番は猫へ、です。何しろ鼻が利く。ぎゃーぎゃーと喚いて、うるさいったらありゃしない。飼い主の懐具合をわきまえているのか、値の張るものに敏感というわけじゃないのは、ありがたい。ドライフードや缶詰にもどうやら好みがあるらしく、気に入らないと、本当に皿をまたぐのには泣かされる。
最近は、寄る年波で、動物病院で「腎臓」やら「肝臓」の異常指数が高いからと、治療食の缶詰となり、「なんか変だわ~」と人間なら“怪訝な”様子でとでもいうふうに食べております。
食べもの以外では、エノコログサ(別名ネコジャラシ。写真のとおり)。夏に見かける雑草です。これに目がない! 摘んだのをポケットに入れて帰宅したりすると、目の色が変わり、うにゃうにゃと嗅ぎまわります。「待て、待て」と制するまもなく葉っぱを齧りまくる。エノコログサの周りにはそれとよく似た草が生えていて、混ざってしまっても、匂いでわかるらしく、ちゃんとより分ける。毛玉を吐き出すために食べるとも言われているけれど、あの飛びつきようは、どうもそれだけでもなさそうな気がするのですが。穂のほうは、これのおもちゃが売られているように、もう大好きな遊び道具。「ネコジャラシ」なんて誰がつけたか知らないけれど、ぴったりです。夏の間、せっせと摘んで帰るエノコログサも、そろそろ葉が硬くなってきて、なかなか柔らかい若葉が見つからなくなっています。

夏から秋へ、野菜も移り変わります

野菜ボックスを開けたら、早くも白菜が! と思ったら「秋一番のミニ白菜です」と添え書きが。見れば、葉先のほうの緑部分の色も濃く、巻き込みもふわっとしています。ザクザクと刻んでゴマ油をたらした酢醤油でからめたら歯触りよく旨そう、など思いつつ、足の速い青菜が先だわね…と。
この夏、はまったおろしニンニクとゴマ油のサラダにすることに。味つけは塩だけで。手がかからずおいしですもんね。
しっかり身がしまった秋茄子と、やはりクセのないサラダ向きの品種らしい小松菜を蒸して。

根菜も来始めました。久しぶりの大根、人参。色つやよく、なまめかしい風情です。産卵率の落ちた鶏さんも一羽丸ごと参りましので、まずはモモ肉から。皮からでる濃厚なだしで他にはだし要らず。ゴマ油で軽く炒め、根菜を入れてひと回ししたら、酒と水をたぷたぷにして、砂糖少々(小さじ1くらいにしました)、煮立ったら醤油で味つけ、やや強めの火で汁気が少し残る程度まで煮ます。

新生姜は千切りに。たっぷりご飯に炊き込みます。塩をほんの少し入れて。枝豆は郷里の新潟から送れらてきたもの。枝豆王国新潟でももうおしまいとのこと。でも夏中、毎日飽きもせず大ザルに盛って食べ続けるんだから、もういいでしょ。県外から来た人はみ~んな、恐れ入るようですよ。

根菜のうま煮が濃いめの味つけなので、汁はあっさりと吸い物仕立てに。具は水菜と干し椎茸を戻してあったもの。溶き卵でかき玉汁にしました。

本日のお茶

薬草茶(ドクダミ、クマザサ、ヨモギ他。岡山の友人から)

本日のおやつ

中村屋の薄皮饅頭(お客様のおもたせ。餡が上品な味わいでした)        

                                   料理人:よこやま