昼めし日記

2010年 2月16日

  昼めし献立 

  • 麦々堂のパン(ツビーベルブロート=玉葱練り込み。胡麻入りパン)
  • 豆腐のディップ(オリーブ油・塩)/すりおろし人参とサワークリーム/黒胡麻ハチミツ
  • 大根・人参のバターソテー
  • ゆで卵とブロッコリのサラダ(ターメリック香りづけ)
  • 千切り大根と、レタスの吸い物



☆昼飯コラム☆

 ”乾物”大好き派にうれしい1冊
タカコ・ナカムラさんの『”Kanbutsuカフェ”の魔法のレシピ』
                         ~乾物のススメ~

 「アラメ」って何? 聞いたことも見たこともないっていう人もいるのでは? 日本海近くの町で育ったので、食卓は魚や海草などはなじみ深い。アラメは、ちょっと見、ヒジキに似ていないこともないけれど、だいぶ違うと言えば違う。我が家では、アラメといえば、乾物の代表格。ヒジキと同じような使い方だったけど、圧倒的にこっちの出番が多かlった。しかし東京で暮らすようになって、買い物に歩いても、まったく見かけることがなく、ヒジキのことじゃないのかと言われたり。手に入らないとなると無性に食べたくなる。しかたなく、帰郷したおり、市場で買い求めていた。アラメのおいしさはヒジキ以上と今でも思っている。
 
それが、数年前、この本の著者、タカコ・ナカムラさんの主宰するWhole Food schoolで、「うわ~」、懐かしいアラメに再会。軽やかな小ぶりの器におしゃれに収まっているけれど、紛れもないアラメだったのです。
 
私にとって乾物は、”大好き”! の前に、乾物”あたりまえ”世代。あまりに身近で、たいしてありがたさもなく育ったというところ。今やヘルシーな食品のラインナップに欠かせない「麩」だって、それこそ年がら年中、食卓に上っていたんだもの。私の育った新潟市周辺で、どこにでも売られていたのは、「車麩」という、真ん中に穴のあいた、直径7~8センチもある大きなあれ。もっとも、さんざん食べさせられた昭和20年代から30年代半ばくらいまでは、食糧不足の時代。おそらく小麦の質もよくなかったのだろう(ちかごろは原料表示に「大豆たんぱく」となっているのもある)、おいしいと思って食べた記憶がないけれど。打ち豆(大豆を水に15分ほど浸したのち、木槌でぺしゃっとつぶしたもの。それを乾燥したのが、たいていの家の台所にあった)、ヒジキやアラメ、ワカメなどの海草、スルメ、干し椎茸、キクラゲ、大根の干し葉…これらは我が家では常備品で、なくなれば必ず補充されていたと思う。
 うれしいことに、この本では我々団塊世代郷愁の乾物はもとより、和食という枠から離れて自由な発想の乾物食材がふんだんに紹介されている。実業の日本社から近々発売です。
 私よりひと回りほど若いタカコさんだけど、太陽にあててうま味も栄養価もアップした干物を食卓に取り戻したいんです、と前から漏らしていたと思ったら、2007年、東京・代々木上原で開店した
Kanbutsu Cafeのプロデュースで実現。同店ではいま、30代の若い女性スタッフたちが乾物を使ったテイクアウトの料理や、スイーツに腕を振るっている。
 お陽さまのおかげですかね、ほどほどにアクも抜けた乾物って、うまみが凝縮されて、ほんと、おいしいんだから。おてんとうさまに感謝したくなるよね。

車麩(手前)と、まんじゅう麩(新潟岩船地方でつくられているので、「岩船麩」とも)。

 大根、人参、飽きもせで~~ 無限の可能性秘める野菜に日々‥
ペースト状にした玉葱が練り込まれた全粒粉のパン。胡麻の固まりなのかパンなのか?というほど粗摺りの黒胡麻がガッツリ詰まったドイツパン。どちらも大好きな旭川・ベッカライ麦々堂の人気アイテム。軽くトーストすると麦と天然酵母が渾然となって醸し出すおいしさにに、あとからあとから、つい手が出てしまう。実際は3~4切れでじゅうぶんなほど中身が充実しているから、おかずまでほいほい食べてると、食べ過ぎになってしまうんだが…。

だいたいはストックしているお米中心に考えることが多い昼飯メニューだけれど、パンに合うおかずを考えるのももちろん楽しい。まず、とってもらくちんなディップを2種。水切りした豆腐(厚揚げの外側をはがして中だけ使うことも多いデス)を手元にあるザルでムニューっと漉して、オリーブ油と塩を混ぜ合わせればオーケー。すりおろしニンニクを混ぜたのもおすすめ。
それと、人参をざざっと(2~3人分で中1本くらいかな)すりおろして、サワークリーム(事務所の冷蔵庫ではだいたい常備してます)と混ぜ合わせ、レモン汁少々と塩、カイエンヌペッパーで辛みと香りづけ。タラマヨも旨いが、人参もイケますよ。
あと、当事務所の定番、蜂蜜に胡麻を煎って半摺りにしたのを混ぜ合わせた黒胡麻蜂蜜ペーストも用意。 

これだけあれば、あとはスープだけでもいいようなものだけれど、何しろ野菜食べなきゃ、食事した気がしないクチなので、年中食べていても飽きるなんてこたぁないです。野菜って、いくらでもレシピを考えられる無限の可能性を秘めた素材だから。大根、人参のような大昔から食べられてきたものでも、きょうはどんなふうに使おうかなと、楽しみは尽きない。切り方を変えてみるだけでも、舌触りから調味料のしみ込み方まで違ってくる。
包丁じゃなく、ピーラーで皮をむく要領で縦に長めに切ったのを、バターで炒めて、バターの香りをからませたら、こんな感じに。塩、胡椒でそれぞれの甘みが引き立つよう薄味に仕上げ、トッピングにはディルのパウダーを散らして。

ゆで卵(昨日のものだったような)と、さっと蒸したブロッコリのサラダには、炒めて香りを出したターメリック入りドレッシングで。軽く塩をふって。

本日のお茶

薬草茶(アマランサス。種も茎も葉も。根津の借家時代に、小さな庭で育てたアマランサスは2階にまで届くほど大きく成長。それを干して保存していたもの)

本日のおやつ

新潟市にある和菓子の老舗「里仙」の逸品「栗かん」。
本練り羊羹ではなく、生菓子の練りきりに近い作り方で、
白あんのなかに栗がびっしり、というのがうれしい。
秋から3月いっぱいまでの季節限定で、しかも、すぐに
売れてしまうので、悔しい思いをしたこともしばしば。
上品な甘みのなかに栗の野趣を感じさせてくれます。

                                   料理人:よこやま



2010年 2月10日

  昼めし献立 

  • 大根と鶏肉の旨煮 →

  • ブロッコリ、蕪、レタスとひよこ豆のサラダ
  • 千切り大根と里芋の汁
  • 大根炊き込みごはん


☆昼飯コラム☆

 ”乾物”大好き派にうれしい1冊
タカコ・ナカムラさんの『”Kanbutsuカフェ”の魔法のレシピ』
                         ~乾物のススメ~

 「アラメ」って何? 聞いたことも見たこともないっていう人もいるのでは? 日本海近くの町で育ったので、食卓は魚や海草などはなじみ深い。アラメは、ちょっと見、ヒジキに似ていないこともないけれど、だいぶ違うと言えば違う。我が家では、アラメといえば、乾物の代表格。ヒジキと同じような使い方だったけど、圧倒的にこっちの出番が多かlった。しかし東京で暮らすようになって、買い物に歩いても、まったく見かけることがなく、ヒジキのことじゃないのかと言われたり。手に入らないとなると無性に食べたくなる。しかたなく、帰郷したおり、市場で買い求めていた。アラメのおいしさはヒジキ以上と今でも思っている。
 
それが、数年前、この本の著者、タカコ・ナカムラさんの主宰するWhole Food schoolで、「うわ~」、懐かしいアラメに再会。軽やかな小ぶりの器におしゃれに収まっているけれど、紛れもないアラメだったのです。
 
私にとって乾物は、”大好き”! の前に、乾物”あたりまえ”世代。あまりに身近で、たいしてありがたさもなく育ったというところ。今やヘルシーな食品のラインナップに欠かせない「麩」だって、それこそ年がら年中、食卓に上っていたんだもの。私の育った新潟市周辺で、どこにでも売られていたのは、「車麩」という、真ん中に穴のあいた、直径7~8センチもある大きなあれ。もっとも、さんざん食べさせられた昭和20年代から30年代半ばくらいまでは、食糧不足の時代。おそらく小麦の質もよくなかったのだろう(ちかごろは原料表示に「大豆たんぱく」となっているのもある)、おいしいと思って食べた記憶がないけれど。打ち豆(大豆を水に15分ほど浸したのち、木槌でぺしゃっとつぶしたもの。それを乾燥したのが、たいていの家の台所にあった)、ヒジキやアラメ、ワカメなどの海草、スルメ、干し椎茸、キクラゲ、大根の干し葉…これらは我が家では常備品で、なくなれば必ず補充されていたと思う。
 うれしいことに、この本では我々団塊世代郷愁の乾物はもとより、和食という枠から離れて自由な発想の乾物食材がふんだんに紹介されている。実業の日本社から近々発売です。
 私よりひと回りほど若いタカコさんだけど、太陽にあててうま味も栄養価もアップした干物を食卓に取り戻したいんです、と前から漏らしていたと思ったら、2007年、東京・代々木上原で開店した
Kanbutsu Cafeのプロデュースで実現。同店ではいま、30代の若い女性スタッフたちが乾物を使ったテイクアウトの料理や、スイーツに腕を振るっている。

 お陽さまのおかげですかね、ほどほどにアクも抜けた乾物って、うまみが凝縮されて、ほんと、おいしいんだから。おてんとうさまに感謝したくなるよね。

車麩(手前)と、まんじゅう麩(新潟岩船地方でつくられているので、「岩船麩」とも)。

 玉ねぎはもう、春を待ちかねて。
大根三昧の日々。冬の大根は瑞々しく、一緒にとりあわせる他の素材ともよくなじむし、味もすぐにしみこむので、仕事をしながらの毎日のおかず作りにはありがたい。丸ごととどいた鶏肉とともに…あれ、そういえば「胸」だったっけ?「腿」だったかしらと、いたっておおざっぱに煮てしまいましたが…ほんの少量でもよくだしが出てくれて、それを大根がいっぱいに吸って、まあ、なんてジューシーな! 
 上に散らした青みは、玉ねぎの芽を刻んだもの。年が明ける頃には、季節の動きをいち早く察して芽を出し始めます。玉ねぎ本体が養分を吸われて痩せていくのが、困るといえば困るのだけれど、いっぱしに「次はワタシよ」と主張しているみたいで、何だか可愛らしく、こんなふうにトッピングにあしらったり、最初の香りだしに油で炒めたりというふうに使っています。
 

 この季節、蕪のおいしさも絶品。ふるいつきたくなるいい女(男?)って、昔の小説みたいな表現をしたくなる。
 テレビの料理番組や料理本で「彩りがきれいですねえ」と、料理研究家の先生に、アシスタントが、お約束ごとのように添える言葉が、カンにさわる、というへそ曲がりの私。北国の冬の食卓なんて、地味な色ばっかしだよ~。コンプレックスに塩を塗りたくるようなこと言わんでくれ! と悪態ついてるけれど、房総の春は一足もふた足も早いし、今時は亜熱帯の沖縄はもとより、遠くメキシコや、南半球から夏の野菜が冬の店頭に出回るのだからねえ。なんとかの遠吠えかしらん。しかし、厳冬の埼玉は寄居の畑で、赤ん坊状態の苗を低温障害や霜からわずかばかりハウスで守り育て、固太りに育ったブロッコリと蕪が届いたら、真っ先に生でかぶりつきたくなるほどに魅惑的。
 さっと蒸したブロッコリの鮮やかな緑。軽く塩でもんだ雪のように白い蕪と合わせたら、目も覚めんばかり。冷え込む早朝の畑で霜を踏む農家の吐く息は白く、春はまだまだ先と思い馳せつつ、その畑の冷たい空気を運んできた野菜たちをいただく幸せを味わっています。

 ご飯にもさいの目に切った大根を炊き込んで。大根はお米の甘さも吸い込んで、ほのかに甘くごはんに馴染みます。生醤油に漬け込んだ針生姜をのせて。

本日のお茶

薬草茶〔ドクダミとトウモロコシのひげ(?…トウモロコシの実を包んでいる。
          女性のからだを守ってくれると聞いています。香ばしくて
          おいしいですよ。お隣の韓国では古くからトウモロコシの
          お茶もあります)〕

本日のおやつ

北海道、六花亭の名菓「バターサンド」
空港や駅で売られているのだけれど。
久しぶりに買ってみたら、変わらない味でした。

    

                                   料理人:よこやま



2010年 2月4日

  昼めし献立 

  • 大根の山椒味噌和え →

  • 間引き大根と油揚げの煮びたし
  • 蕪菜入りごはん
  • 千切り大根と根深葱、油揚げの汁

中華スパイス、花山椒の香りが広がります。

 3年ほど前、近所に坦々麺のおいしい店がオープンしたのですが、めったに外食しないので、初めてランチを食べに行ったのは1年以上もたってから。「味の決め手はこれです!」と店のマスターが見せてくれたのは、一抱えもある大きな瓶にびっしりと詰まった「花山椒」。オーナー自ら故郷の中国から持ってくるもので、日本で売っているものと全然違うんだそう。私も上野のセンタービルで大袋を買ったのがあって、バンバン、というほどじゃないけど、香りを楽しみながら時々使っていました。
「栄児家庭料理の店」というその店の坦々麺(=汁なしタイプが山椒もたっぷり効いててワタシ好みかな)、汗がでるほど辛いというほどではないけれど、食べ終わるころには舌がしびれてしまって、食後の水を飲んだら、なぜかマズいのに閉口(どうも、強烈なしびれのせいらしい)…。
 で、先日、しばらくぶりに入ったら、レジのところに例の山椒が小袋に入っておいてあって、ほしい人に分けているとのこと。もちろん買いましたよ。家に帰って袋に鼻を突っ込んで匂いを嗅いだら、華やかで澄んだ香りが広がって、たしかに今まで使っていたものとあまりに違っていました。こうなるとあれやこれやと使いたくってたまらなくなってしまう。
 
 きょうは、いつもの大根の味噌炒めを花山椒でひと味ちがうものにしてみようかな。
 大き目のさいの目に切った大根を細く切った出し昆布とともに軽く蒸し煮に。大根にはたっぷり水気があるから、水は少なめにして、鍋の水気がなくなりそうなところでそのまま蒸らし状態に。
 小ぶりのすり鉢で花山椒を粗摺りし、ごま油を熱して軽く炒めて香りが立ってきたところに、味噌と、同量の酒を入れてアルコールを飛ばしたら、好みで砂糖を加え、大根を和えます。酒を多めに使えば甘味控えめになりますね。仕上げに味噌と相性のいいすりゴマもたっぷりかけました。

 冬の大根は大ぶりのものが多いですよね。おでんや、ふろふき大根にしたりと、からだを温め、大根そのものの味わいをたっぷりと楽しめる料理に腕まくりしたくなります。スルメイカの煮汁をしみ込ませた煮物なんかもたまりませんね。
三浦大根のようなどでかい大根を前に、食べきる工夫にちと頭を悩ますこともありますが…ここんところ事務所では、大量にすりおろして卵焼きにいれたり、水気を軽くしぼった大根おろしと、同様にすりおろした山芋と泡立てた卵白と合わせてだし汁で煮た野菜をとじたりして、たっぷり食べています。
 今週は早くも届いた間引き大根も使って、新旧大根の競演(?)となりました。葉っぱもいっしょに軽く蒸し、油揚げは直焼きするか、フライパンで焼いて千切りに。だし汁に酒、塩、醤油でやや濃い目に味をつけ、大根、油揚げをひたして。
 汁にも大根が入ります。コクのある山椒味噌に対し、塩味に仕上げます。香り付けに醤油を少々。
 ご飯が炊き上がったら、刻んで塩で軽くもんだ蕪菜を加えて混ぜ合わぜ、菜飯に。
 春の気配を運んできたやさしげな間引き大根と、どっしり大地の滋養を溜め込んだ冬大根。それぞれのおいしさを味わわせてもらいました

本日のお茶

薬草茶〔ドクダミとトウモロコシのひげ(?…トウモロコシの実を包んでいる。女性のからだを守ってくれると聞いています。香ばしくておいしいですよ。お隣の韓国では古くからトウモロコシのお茶もあります)〕

本日のおやつ

青森・若葉農園のリンゴ     

                                   料理人:よこやま



2010年 1月28日

  昼めし献立 

  • 春菊のおろし大根和え
  • 里芋、人参、厚揚げの旨煮
  • 菜飯(蕪菜)
  • 味噌汁(聖護院大根、里芋、蕪菜)

たっぷりの大根おろしと泡立てた卵の白身で和え衣。

だいぶ以前のことになるけれど、実家に帰った折、近くの農家の庭先で春菊を見かけたことがある。畑からくっついてきた種が
落ちたのか、やんちゃ坊主みたいに勝手に育った、といった風で、たまに摘み取られておかずの足しにされていたかもしれない。
街の中で暮らしていると、春菊がその辺に生えている?、なんていう風景、見かけないですもんね。

さて、この季節、野の扉からも香り豊かな春菊が届きます。鍋ものの具に欠かせない、和の野菜だけれど、生のまま、サラダに
入れたり、炒め物にもしたりと色んな使い方をしています。
本日は、さっと蒸して和えものに。卵白を半分くらい泡立てたところに大根をたっぷりとおろして、少し水切りしたのを混ぜ合
わせ、火にかける。卵白に火が通ったら春菊と合わせて塩味をつけ、ごま油を回しかける。ふんわりした口当たりとごま油のい
い香りに、箸が進みます。

煮物の定番、里芋の旨煮は、人参と、厚揚げを合わせて。

せっせと食べます、青物野菜。ついでのように扱われがちな大根の葉も、蕪の葉も、人参の葉も(ついてくれば)…少しくらい黄色くなっても気にせず、炒め物に放り込み、卵焼きに混ぜ込み…と。新鮮なうちにさっと蒸してかさを減らせば場所もとらないし。ここのところは、蕪菜を炊き上がったご飯に入れた菜飯が活躍中。

お味噌汁の具は、聖護院大根と、里芋と、蕪菜の緑を彩りに。赤ちゃんの頭くらいもある聖護院大根、一見手強そうに見えるけれど、普通の大根より火の通りも早い気がします。

本日のお茶

薬草茶(ドクダミと庭で育てたアマランサス)

本日のおやつ

黒糖ピーナツ(暮れにいただいていたもの)       

                                   料理人:よこやま


2010年 1月27日

  昼めし献立 

  • 鮭汁(塩鮭、大根、人参、サツマイモ)
  • 菜飯(蕪菜)
  • ジャガイモすりおろしと蒸しリンゴ入り卵焼き
  • ブロッコリと蕪のサラダ。


☆昼飯コラム☆

 熟し柿で柿ピューレ(!?)

 昨年11月だったか、手のひらにやっとおさまるくらいの大きな富有柿を1個、いただいた。
富有柿は“甘柿”ですぐにも食べられるのだけれど、まだ少し固く、もう少しもう少しと置いておいたらつい食べそびれ、しまいにはその存在さえも希薄になっていき。そうこうするうち熟してぽよぽよに。これは何とかしなくちゃ…と思うものの、じつは私、熟し柿と、ふかしたサツマイモはあまり得意じゃないのです。サツマイモはたぶん子どものころにさんざん食べたことからきているかもしれない。
柿は、わが郷里では、この富有柿とそっくりのかたちをした柿があるが、これが極めつき(?)の渋柿で、家では父が毎年この渋柿に焼酎を吹きかけて「さわし柿」という渋抜きにしていたから、もっぱらこちらを食していた。このさわし柿がさくさくといい歯ざわりでとてもおいしく、炬燵でぬくぬくとしながら何個でも食べられる気がしたものだ。
 国語の教科書のなかで、びゅうびゅうと冷たい風のなかを「熟し柿」を買いに走る子どもの話が出ているのを、「熟し柿」ってどんなものだろうなどと、どこか遠い風景のように描いたことを、果物屋の店先に柿が並ぶ頃になると、なぜか思い出す。
東京で暮らすようになったら、お店では「甘柿」か「干し柿」しかないのが不思議で。もっとも田舎では柿とかイチジクとかビワなどは店で買う物ではなかったようだけれど。
 で、手元で熟した富有柿をどうするか。ジャムにしてみるか…柿ジャムを手づくりしたことのある人はいそう。でも見たことはないなあ。それにパンを食べるときにあまりジャムを塗らないし。煮詰めて酢を加えたらピューレになるかな…。
 というわけで、柿はもう“触れなば落ちん”いった風情なのでそっとホーローの鍋に移し、手で中身を搾り出し、まずは軽く煮詰めることにしよう。5分ほどくつくつと…あ、甘っ! 酢を足してまた4~5分…おぉ~、熟成柿酢にも似た香りがしてきた。これは使えそうですよ。
 トマトのピューレよりずっと水分が多い感じなので、柿酢のように使ってもよさそう。まずはサラダのドレッシングに。ジャガイモとブロッコリを蒸して、塩コショウで味付けし、オリーブ油と、このインスタント柿酢で和えました。
この柿ピューレに味噌と酒を少し加え、火にかけてアルコール分を軽く飛ばせば、ムニエルなどのソースにも合うかしら。

北国では、冬の魚といえば、これ。鮭をいただきました。

 暮れに麦々堂からいただいた新巻鮭が冷凍室で冬眠中だったことを思い出し、事務所ではめったに作らない魚を使ったおかずを一品。

郷里は北国ゆえ、冬には酒粕を溶かし込んで煮た鮭汁がよく作られるのだが、北海道では“三平汁”っていうのかな。当事務所では(酒の常備は欠かさずとも)酒粕は置いておかないので、潮汁に近い薄味の鮭汁に。
ジャガイモがあれば万全なれど、あいにく在庫なし。代打はサツマイモです。え~っと言うなかれ。薄塩味の汁にほんのり甘めのサツマイモ。おいしいもんです。それと冬には欠かせない野菜、大根はたっぷりあるし。大根は魚と相性良し! 鰤カマや、イカなどと煮ると魚のだしを吸っておいしさ倍増ですよね。鮭とももちろん仲良し。
鮭はさっと湯通し(酒を少し入れてね)してから。
鍋に水と酒、生姜の薄切りを加えて煮立たせたところに鮭を入れて煮ていき、少し塩が身から出たかなというところで、一度鍋からあげ、野菜を入れて煮込む。野菜に味が染みてきたら、鮭を戻して、身崩れしないよう火加減に注意しながら煮込む。

風邪の予防にリンゴがいいそうです。自然食通信社も毎年、青森の若葉農園さんから1箱買って、おやつにいただいたり、料理にも結構使います。きょうのひと品は、リンゴに薄く塩を振って軽く蒸し煮にしたのを卵に入れて焼いたもの。ジャガイモのすり下ろしも加えて。ジャガイモのでんぷんでむちっとした食感が出ています。上に乗せたソースは、スライスした玉葱を炒めてトマトピュレと、隠し味に味噌を少し入れたもの。

目にも鮮やかなブロッコリの緑と、蕪の白の対比がほんとうに美しい。ブロッコリは軽く蒸して。蕪は生のままスライス。オリーブ油をほんの少し全体によくからませ、さっと塩と酢を降って、シンプルながらブロッコリの深みのある味がさらに増したサラダに。

菜飯の菜は、サラダに使った蕪の菜。薄~く塩味をつけて。大根、蕪ともに菜っ葉のほうはついでになりがちだけれど、サラダやおひたし、炒め物にとおおいに活躍してくれる、ビタミンもたっぷりのたのもしい存在。

本日のお茶

薬草茶(ドクダミ、ヨモギ、玉葱の皮…外側の茶色くなった皮を溜めておきます)

本日のおやつ

若葉農園・神さんの「金星」という黄色いリンゴ       

                                   料理人:よこやま



2010年 1月20日

  昼めし献立 

  • 白菜、ほうれん草、春雨のとろろとじ
  • キムチ汁(シイタケ、大根、サニーレタス)
  • サツマイモと生姜入りごはん
  • 漬物(野の扉からの白菜漬、赤蕪甘酢漬)


☆昼飯コラム☆

 熟し柿で柿ピューレ

 昨年11月だったか、手のひらにやっとおさまるくらいの大きな富有柿を1個、いただいた。
富有柿は“甘柿”ですぐにも食べられるのだけれど、まだ少し固く、もう少しもう少しと置いておいたら
つい食べそびれ、しまいにはその存在さえも希薄になっていき。そうこうするうち熟してぽよぽよに。こ
れは何とかしなくちゃ…と思うものの、じつは私、熟し柿と、ふかしたサツマイモはあまり得意じゃない
のです。サツマイモはたぶん子どものころにさんざん食べたことからきているかもしれない。
柿は、わが郷里では、この富有柿とそっくりのかたちをした柿があるが、これが極めつき(?)の渋柿
で、家では父が毎年この渋柿に焼酎を吹きかけて「さわし柿」という渋抜きにしていたから、もっぱらこ
ちらを食していた。このさわし柿がさくさくといい歯ざわりでとてもおいしく、炬燵でぬくぬくとしなが
ら何個でも食べられる気がしたものだ。
 国語の教科書のなかで、びゅうびゅうと冷たい風のなかを「熟し柿」を買いに走る子どもの話が出てい
るのを、「熟し柿」ってどんなものだろうなどと、どこか遠い風景のように描いたことを、果物屋の店先
に柿が並ぶ頃になると、なぜか思い出す。
東京で暮らすようになったら、お店では「甘柿」か「干し柿」しかないのが不思議で。もっとも田舎で
は柿とかイチジクとかビワなどは店で買う物ではなかったようだけれど。
 で、手元で熟した富有柿をどうするか。ジャムにしてみるか…柿ジャムを手づくりしたことのある人は
いそう。でも見たことはないなあ。それにパンを食べるときにあまりジャムを塗らないし。煮詰めて酢を
加えたらピューレになるかな…。
 というわけで、柿はもう“触れなば落ちん”いった風情なのでそっとホーローの鍋に移し、手で中身を
搾り出し、まずは軽く煮詰めることにしよう。5分ほどくつくつと…あ、甘っ! 酢を足してまた4~5
分…おぉ~、熟成柿酢にも似た香りがしてきた。これは使えそうですよ。
 トマトのピューレよりずっと水分が多い感じなので、柿酢のように使ってもよさそう。まずはサラダの
ドレッシングに。ジャガイモとブロッコリを蒸して、塩コショウで味付けし、オリーブ油と、このインス
タント柿酢で和えました。
この柿ピューレに味噌と酒を少し加え、火にかけてアルコール分を軽く飛ばせば、ムニエルなどのソース
にも合うかしら。

やさしく、ちから強い、山芋三昧はいかがかな。

 しばらくお休みしていた山芋が野の扉からまた届き始めました。自家採種して育てるようになったというごつごつと武骨な風体のこの山芋、すりおろしても簡単にずるりとたれてはくれず、同量くらいのだし汁でのばしたらちょうどいい濃さに。あっさりした煮びたしを卵とじならぬ、とろろとじ(卵白入りですが)にしてみました。
 蕎麦好きだけれど、蕎麦屋でとろろ蕎麦というのを注文することがめったになく、酒のつまみに、茹でた蕎麦(この場合、茹でて売っているものでも可)にすりおろした山芋(大根おろしを混ぜたりもします)をからめ、油を薄くひいたフライパンで焼いて、焦がしバター醤油をかけたら、私の中では新発見のおいしさで、これですっかり山芋使いのとりこに。

 このとろろ汁を塩、醤油で薄味に仕立て、鍋に移して火にかけ、半分くらい火が通って、もったりしてきたら、吸い物くらいの濃さのだし汁で白菜、ほうれん草、春雨、をそれぞれさっと煮て、器に盛ったところにかけ回す。
“精がつく”っていわれるように、ふくよかでこっくりとした味わいは、からだがへたりそうなときに力をつけてくれそう。我ながらおいしいじゃん! と、自画自賛です。

ご飯にはサツマイモを炊き込んで。炊きあがったところに生醤油に漬けた千切り生姜をたっぷり混ぜ合わせて。山芋ともども、寒さに縮こまったからだを中から温かくしてくれる生姜。冬の寒さに負けないからだづくりに欠かせない大切な食材ですね。シンプルに生醤油を使うこうした食べ方では、醤油もごまかしがきかないので、いい醤油を選びたいもの。

白菜漬も、赤蕪漬も、野の扉から。
泰子さ~ん(野の扉の女主人デス)、白菜の塩の加減、発酵の具合ともに絶妙ね。お茶受けなんかにしたら、あっという間に食べ終わってしまいそうなので、けちけちと食べています。甘酢が浸透して色も鮮やかな赤蕪も、美しいです。

汁には白菜キムチの古漬が入りました。熟した酸味がひなびた味わいにしてくれました。

本日のお茶

薬草茶(ドクダミ、ヨモギ、玉葱の皮…外側の
茶色くなった皮を溜めておきます)

                                   料理人:よこやま