昼めし日記

2005年6月15日
昼めしの献立 

  • ブロッコリーと人参のサラダ、煮卵添え
  • キャベツとリンゴのソテー
  • 大根、玉葱、胡瓜の中華風ゴマ入りスープ
  • ご飯
2005年6月15日の昼めし

 梅雨入り。世は雨に濡れる紫陽花に目が行きがちだけれど、この季節に路地裏で強く存在感を増す花がある。それはドクダミの白い花。日があたらない、建物と建物の間や、ひとの目線から追いやられた家の軒先の、コンクリートの隙間にひっそり群生している。たいてい黒々と湿った土に根を生やして。匂い立つような濃い緑色の葉っぱから、うっすら紫の茎、発せられる独特の芳香。
 ふっと目をやった瞬間、胸をつかまれる。闇に浮き上がる白さに。痛いほどに。

 蒸し暑さは増してくるけれどキュウリを生でばくばく食べるまでには夏用の体になっていない。「サラダで食べるには、今はまだ、体が冷えそうだよね」と昨日も食卓で話していたとおり。だからサラダには入れず、厚めに切ってスープの仕上げに放り込んでしまおう。大根も厚めの短冊、新玉葱も厚めに切ってさっと鰹だしでゆで、歯ごたえを残したままゴマ油や白い煎りゴマ、醤油、酒で味つけの中華風スープに。

 キャベツと人参とりんごをざくざく刻んで塩をふり入れ、フライパンで蒸し煮風にしながら、キャベツにざっと火がとおったらクミン、マスタードシード、レッドペッパー、黒胡椒、中濃ソース(高橋ソースのもの)で炒める。「油使ってないの。お肉も入ってないのにコクがあっておいしいのね」と好評だった。

 高橋ソースの「カントリーハーヴェスト」シリーズはできる限り国産の原料で、特別栽培野菜を使用してつくられたものだそう。原材料名には野菜のほか、リンゴ、トマト、たまねぎなどとあるので、キャベツ・リンゴの炒め組み合わせも“アリ”かな、と思った。正解でした。

 サラダは人参、ブロッコリーをゆでてオリーブ油・酢・塩・レッドペッパーのドレッシングであえたシンプルなものに、八角醤油に漬けた煮卵を添えて。

 さてドクダミの花の話に戻るが、幼い記憶にしみついていた花のはずなのに上京して何年も、足下に生えてることに気づかなかった。たまたま飲み屋で活けてあったドクダミの花になつかしさをおぼえ、話しかけた店主に「よくみるとひとんちの家と家のあいだとかに咲いてるよー?」と言われたのがきっかけだった。

そうか、よくみてなかったんだ。
 気づいたらあっちにもこっちにも。妻が妊娠した男友だちが、「なんか最近街を歩くと赤んぼだらけでさー。世の中にこんなに赤んぼいたのか、って思った」と言ってたことを思い出した。こんな気分? 様々なことが視界に入らず、日々を過ごしてしまうことがほんとうは多いのだろうな。

本日のお茶 宿根ソバ
本日のおやつ 和三盆

料理人:でこ


2005年6月13日
昼めしの献立 

  • リンゴとチーズのオムレツ
  • ズッキーニ・大根・ルッコラのサラダ
  • 丸ごと小玉ねぎとズッキーニのスープ
  • ご飯
2005年5月31日の昼めし

 新玉ねぎ時代を過ぎてぐっと実がひきしまって皮も褐色になった小玉ねぎ。かつおだしで丸ごとの小玉ねぎをコトコト煮込みます。スープのおろし際にズッキーニを入れると、色も美しい。味つけは塩、しょうゆ、酒、そしてコショウをきかせて。
 オムレツの準備をしながら途中で卵が2個しか残っていなかったことに気づき、ならばと卵、リンゴ、チーズを合わせたところに小麦粉を投入。オムレツのようなパンケーキのようなものを着地点として目指します。スパイスは迷いましたが、クミン。またか。いや、でも好きなので。オリーブオイルをフライパンにひいてじっくり焼き上げます。
 サラダのメインは大根。ひたすら短冊切り。軽く塩をしてしばらくおきます。ズッキーニもここでは短冊。マヨネーズであえてお皿に盛ってからたっぷりの煎りゴマとルッコラをちらして出来上がり。初めて食べたときは、不思議と思ったルッコラですが、年を追うごとに好きになっていきます。コリアンダーも、ゴーヤも。日本の熱帯化とも関係あるのかなあ、それとも食べてる本人のアクが強くなってきているからなのか。

本日のお茶 つゆ草
本日のおやつ 煎り大豆

料理人:しろ


2005年6月10日
昼めしの献立 

  • ご飯(鰹節、ゆかり、すり胡麻入り)
  • 味噌汁(白菜、水菜、海苔)
  • 千切り人参入り卵焼き
  • フダン草と大根のゴマ味噌あんかけ
  • ジャガイモとリンゴのサラダ
2005年5月31日の昼めし

都内の病院に友人を見舞った。7階にある病室の窓の向うに高層ビルが林立している。ふだん、せこせこと下のほうばかり見て生活している身には、別世界のような光景である。梅雨入りしたこの日、高層ビル群は細かく降りしきる雨に煙って蜃気楼のように浮かんで見えた。

住まいの近くに毎年小さな実をつける梅の木があって、2つ、3つと、路地に青い実を落とし始めるのもこの季節。ジュースや果実酒用の青梅も、千葉の農家から届いている。ひとり当たりにすると僅かな量だけれど、蜂蜜をまぶし、小瓶に漬けこんだ。

きょうのご飯は、いただきものの由香里(梅干を漬けるときに一緒に仕込んだ赤紫蘇を乾燥させ粉末にしたもの)と、だしをとったあとの鰹節を刻み、すり胡麻を加えて炊き込んだ。由香里にけっこう塩気があるので、塩味がつきすぎないよう気をつけて。

卵焼きといっても、スクランブルエッグのようにかき回しながら固める感じ。千切りにした人参を1本分、軽く油で炒め、溶き卵と混ぜ合わせ、塩、コショウで味付けしたら、油を引いたフライパンで、火が通ればもう出来上がり。

野菜ボックスの中に見つけたフダン草は幅広の白い茎などが、あっさりした味かと思わせるけれど、けっこうアクのある野菜です。短冊に切った大根をゆがいた鍋でさっとゆがいて大ぶりに切り、皿に盛ったところに、味噌と酒を軽く煮詰め、すりゴマを加えとろりとさせたあんをかける。

サラダはさいの目に切ったジャガイモをゆで火が通って蒸らし状態になったところにさいの目のリンゴを加え、塩、コショウをして、冷めたらボウルに移し、スライスした玉ねぎを加えてオリーブ油を全体になじませる。リンゴの甘酸っぱさがジャガイモのもったり感を軽やかにしてくれます。

まだまだ来る白菜に戸惑いながら(長いこと冬にしか使わないで来たものだから、料理のカンがなかなか作動しないわねえ)、きょうはなんてこともない味噌汁の具です。白菜が煮えたところに、沢山もらって湿気させてしまっていた海苔を5枚も、ちぎって加え、水菜も最後に入れます。

本日のお茶 スギナと宿根ソバ
本日のおやつ たねやのまんじゅう

料理人:ぎん


2005年6月8日
昼めしの献立 

  • 冷や奴、がんも(もぎ豆腐店)
  • 黄色トマト、ズッキーニ、大根の温サラダ
  • 大根と玉葱の辛味噌ごろも
  • まぜごはん(大根葉、ゆかり)
  • 白菜スープ
2005年5月31日の昼めし

冷え性ぎみの私は、ここのところ毎朝、何を着たらよいか迷う。日中はあたたかくても夜寒くなるのが心配だし、外は日差しで暑いくらいでも室内は分からない。冷房なんか入っていたらよけいダメ。
あれこれ考えると結局カーディガンとショールとウィンドブレーカー、3つもはおるものをひっつかんで家を出て、一日持ち歩くことになったり。初夏なのにちっとも爽やかじゃないのだ。あーあ。

そうはいっても体は夏の準備をはじめているのかな。酸っぱいものや、辛いもの、夏野菜を食べたい気分が増してきた感じ。昨日、埼玉県本庄に取材同行した際、農家の方からお土産にいただいた、もぎたての黄色いミニトマトと青々したズッキーニ。これらで温サラダにしよう。大根を円柱状の周囲からそぐように回しつつスライスして塩をふっておき(水を出す)、卵はバターでほろほろになるまで炒ってパセリと塩・胡椒で準備。クミンとオリーブ油で火を通したズッキーニをすこし冷まし、最後に塩・黒胡椒・酢・オリーブ油と半分に切ったトマトと合わせる。

もう一品。たっぷり残っている大根と玉葱を少量のだし汁で煮、火がとおったら合わせ味噌とゆず味噌、酒、沖縄の島唐辛子で和えたもの。島唐辛子は、唐辛子と塩と泡盛でつくられたシンプルなペーストですが、小さじ3分の1でもけっこう辛い。鼻にぬける爽快な辛さで、夏に向けて活躍しそう。
白菜スープも辛すっぱめにしようと、鷹の爪を入れて油で一度ざっと炒め、しゃきしゃきした歯ごたえが残るよう繊維の方向に刻んだ白菜と玉葱を入れて鰹だしで煮込み、最後に酢・酒・醤油と、大葉を刻んで入れて。

昨日のもうひとつのお土産は、もぎ豆腐店のお豆腐。ふわふわの只管豆腐を冷や奴でそのまま口にふくむと、やわらかな大豆の甘みがすーっとからだになじみ、するするといくらでも入っていきそう。ただひたすらに手づくりを大事にし昔ながらの豆腐の味をつたえていきたいという社の姿勢が、品物に結実していると感じました。醤油で食べたけれど、きっと塩もおいしいだろうな。人参や芋の色が明るいがんもも一緒にいただきました。

本日のお茶 スギナと宿根ソバ
本日のおやつ ソバガキ

料理人:でこ


2005年6月1日
昼めしの献立 

  • テンペ、カリフラワー、ズッキーニの炒めもの 
  • ココナツミルクと豆入り卵焼き、
  • 味噌汁
  • 定番野菜サラダ

5月の末に、リンゴが届いた。岩手から一条ふみさんが送ってくださったものだ。病床にある友人に食べさせたいと思い、あちこちに訊ねたのだけれど、有機栽培のものはもう、生産者のところでもなくなったと言われていたから、とてもありがたい。夜、さっそく家に届けに行く。
考えてみれば、もう今年のリンゴの花は遅いところでも5月の下旬には開花しているというのだから。作年秋収穫のリンゴの保存もそろそろ限界というのはもっともなこと。北国の畑で咲き競っているであろう可憐な林檎の花々のかぐわしい香りを思い起こしつつ、しばらくはその名残のリンゴをご相伴しよう。

ここのところ用があって表参道に行くことが多いが、このあたりには、オーガニックフードの大きなスーパーマーケットに、レストラン、カフェと集中しているので、帰りにはちょこっと買い物ができる。
この日買ったのは、国産テンペ。乾燥納豆のような言われ方をしているものの、納豆菌ではなく白カビのようなもので発酵させているそうだから、なにか別物の感じがする。20年ほど前に知人からいただいたテンペはポコッと割れて見た目、白壁のような感じで、さくっとした食感と、軽く発酵した大豆の風味がおいしかった。もともとはインドネシアで日常的に食べられている食材とのこと。
今日のテンペはそのインドネシアのものとだいぶ違うようだけれど。これを一口大に切ったのと、カリフラワー、ズッキーニを炒めて、たれ(味噌、しょう油、酒、キムチの素、プルーンジャムを混ぜ合わせて)をからめる。たれに加わえたジャムの甘酸っぱさがアクセントに。

卵焼きは冷蔵庫に常備していた金時の煮豆と、ココナツミルク(次亜塩素酸Naで漂白しているものが多いので表示にご注意)を溶いた卵に混ぜて、たっぷりめのオリーブ油で厚焼き玉子に。味つけは塩コショウで。切り口を見せて皿に盛りつけたら、豆の断面がきれいに見えて、ちょいお茶目な仕上がりです。

味噌汁には、大根、人参に、ベトナムのフォー(米の麺です)が入って。つるつるしたフォーの食感は涼しさを感じさせてくれるから、夏の汁物にいけそう。

サラダは、新玉ねぎ、キャベツ、人参と、当事務所定番もの。

本日のお茶 ヨモギ、宿根ソバ、スギナのブレンド
本日のおやつ リンゴ

料理人:ぎん


2005年5月31日
昼めしの献立 

  • 絹さやご飯
  • ジャガイモ、インゲン豆(紅白)、タコのトマト煮込み
  • 河内晩柑ドレッシングのサラダ(胡瓜、人参、新玉ネギ、河内晩柑)
  • 味噌汁(小松菜と卵、青じそ)
  • 焼きままかり
  • しょうゆ豆
2005年5月31日の昼めし

絹さやの出盛りには必ず食べたくなる、千切り絹さやの炊き込みご飯。塩味だけでシンプルに炊き込みます。生姜を合わせることもあるし、しょうゆ味もいけます。
編集長持参の一品、トマト煮込みには、ズッキーニと、インゲン豆(赤)を加えて増量。これもまた編集長自家製のしょうゆ豆(煎った豆をしょう油に漬け込んであります)も食卓へ。
焼きままかりはスタッフの帰省みやげです。「春先より育っている感じね。」私は頭からかぶりつきます。小さいながら口も目玉も脳みその苦味も同時に感じられる頭。本能を刺激するのでしょうか。シシャモも目刺も頭から。でも、人が残したものは、そんなにおいしそうには見えず、やはり、ここをかぶりつく行為が快感なのか? 
サラダに河内晩柑を入れましょう。半分は絞ってかつおだしと醤油と合わせ、酸味を酢で補ってドレッシングに。残りはほぐしてサラダの具に。今回はオイル無しです。今年の春のお花見で、お寿司のように醤油をちょいちょいとつける日向夏の食べ方を教わったのですが、これがおいしかった。そんなことを思い出してつくりました。
味噌汁には、最後にたっぷりの青ジソ。これひとつで、いつもの食卓の空気が変る気がします。いよいよ夏を、実感。

本日のお茶 ツユクサ(腎臓にいいそうです)

料理人:しろ