本枯れ鰹節も「絶滅危惧種」に?
いつも削り立ての鰹節を売ってくれる鰹節店に立ち寄ると、山盛りになった削り節を店主が小袋に詰め替えています。「きれいに削られていますねえ」と感心してたら、「これねえ、見た目はそうなんだけど、おいしくないのよ」と、思いがけない一言が。手に乗せてもらったひとつまみを食べてみると、あらら、鰹節独特のじっくりと燻した香りがない。噛み締めてもうま味が染み出てこない…? 「見た目は『本枯れ』風だし、表示まで『本枯れ』ってなってるのまであるんだけど、実は違うのよ」と、不可解なおことば。
最近は、最終のかび付け工程の手前で、完成品として出回っているのが増えてきていて、しかもそうしたものが『本枯れ』として堂々とまかり通っているのだそう。この最終工程を省けば当然、仕上がりが早くなるし、仕事量も減るから、商品の回転がよくなる。「お蕎麦やさんでも、『本枯れ』節使用と謳っていて、これを使っていたりするから、汁を飲んでがっかりしてしまうのよ~」と言っていました。プロの業者から「これで充分」という注文らしく、商売といいながら店主もどこか浮かない顔です。
いまやアミノ酸入りの「風味調味料」しか使ったことがないという消費者がほとんどだし、おひたしにかけたりする削り節も、パックものというのがふつうですから。見抜けないでしょうねえ。
「こういうものが『本物』と名乗って知らない間にどんどん置き換わっていけば、いつの間にかこれが”本物”ということになっちゃってるって思うと、腹立たしいよね」
時間と人の手をかけてていねいに仕事をしていることが仕上がった鰹節にきちんと現れているから、だしとして最高位にあるのも納得と思っていたのに。う~む。鰹節の世界も後継者難というし、「経済効率」という現代の”伝家の宝刀”に抗しきれなくなったということか。いよいよ鰹節も「絶滅危惧種」入りとなるんでしょうか。
待ちわびて届いた秋野菜に感動ひとしお、細胞も小躍り
ボックスを開けるたびに、秋の色に彩られていく野菜たち。2ヶ月ぶりの人参、蕪を見つけて、しばし感動にひたります。人参は、太いものでも親指大ほどで、食べるのがもったいないような。しかし、しかし。食べたい衝動を抑えられるはずがない。この可愛らしい人参と、純白の蕪、秋キャベツは久々の温サラダと相成りました。
予測を裏切る激しい気候変動にも負けずに、逞しく秋を迎えた野菜は、どれも包丁を入れると、パキッと自ら割れるように瑞々しい肌を見せてくれるのに、またも感動。
強火でさっと蒸して、オリーブオイルを細くかけ回し、塩を振って、酢をはらりと散らすだけのサラダ。う~ぅん、ふふふっ…スタッフともども不思議な快感にしばし言葉にならず。
人参、蕪、キャベツとどれも初物なんですもん。一般市場ではいつでも手に入るだろうけれど、待ちわびて口にした瞬間、しまい込まれていた香りや味の記憶までもが蘇り重なって、感動ってこんなふうに押し寄せてくるものなんだなあなどと、いつものことながらしみじみ思います。
そうそう、新生姜もようやく届きました。このごろは、新生姜の顔をみたら、まずは即席醤油漬け。これを新米の炊きたてごはんにのっけて、味噌汁だけあれば、あと何にもいりませんって言いそうになる。ごはんが炊きあがる1時間ほど前に、千切りにした生姜を生醤油に漬けておく、というそれだけのことだけれど、滅法いけますなあ。酒の後なら、なおよろしいですね。醤油は、なるたけ厳選してくださいまし。
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不当と思えるほどにお安くて、豆腐づくりの副産物なれど、何ともありがたい素材のおから。鍋に油を多めに入れて、おからによく混ぜ込んだら、火にかけて油を馴染ませ、たっぷりのだし汁と酒、塩、醤油で煮詰める。別鍋で人参、牛蒡、油揚、椎茸を気持ち甘めの味つけで煮いたら、おからへ合流。火を止めてからインゲンを彩りに少しと、長葱の小口切りをたっぷり混ぜ込み、余熱で火を通します。
産直のお気に入り味噌が切れているのだけれど、ぐずぐずと買わないままに、きょうの汁碗は吸い物仕立てで。初物のサツマイモと茄子、油揚、仕上げに、蕪菜も入れて。
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