昼めし日記

2009年 10月8日

昼めしの献立 

    • 大根、人参、ゴボウ、鶏もも肉のうま煮
    • 秋茄子と、小松菜の温サラダ(ニンニク風味)
    • 新生姜と枝豆のご飯
    • 吸い物(水菜と椎茸、卵)
猫の好物、エノコロ草も枯れて秋の気配

卵を少ししか産まなくなった鶏を肉にしますよとお知らせがあってから数日のち、胸、腿、ササミ、手羽と、1羽まるごと解体された鶏さんが、ガラのなかにきれいに収まり、野菜とともに届く。臭みもなく、日持ちしてくれる野の扉の鶏肉はずぼらな料理人にとってはありがたい。
手羽や皮の部分を少し放り込んだだけで濃厚なだしがとれるし、ガラは長ネギの先っぽや玉ネギの皮を放り込みコトコトとだしをとっておく。このだしで大豆やインゲン豆なんか煮こんだら、豆の旨味と渾然一体のおいしさに。ついつい箸がすすみます。
ふだんは食品スーパーに寄っても、肉の売り場はいつも素通り。私の子ども時代は、最近流行りの“地産地消”はあたりまえ、 新鮮、安い、おいしい野菜と魚で育った世代なので、時々、飼い猫と魚を分け合う暮らしで、肉料理のおいしさもわかるけど、肉に執着なく、肉料理があまり身につかなかったなあ。

昭和30年代半ば、両親とも共稼ぎしてもわが家の毎月の暮らしはやりくりがたいへんだったようで、母が買い物に行くのにくっついて行っていたから、月末に通い帳にたまった金額が全額払えなくて、繰り越してもらっていた。
そのうち親類の農家が当時はまだ珍しかった孵卵器でかえしていた雛鳥を30羽ほど譲ってもらい、借家の裏庭に金網で鶏小屋を建てて飼い始めた。鶏が待望の卵を産むようになると、いつも行く八百屋さんが時々買いに来たりしていた。少しはわが家の経済も潤ったのだったろうか。子どもだった私はそうしたことにはまったく頓着なく、ほとんど毎日遊び呆けていたけれど、当時、八百屋では卵1個25円くらいで売られていたと記憶している。
 たまに、その親類の農家に鶏を絞めてもらっていた。お腹のなかに入っていた卵の黄身みたいなのが(卵になる手前なのね)ずらずつながっているのを何度か目にして、鶏ってすごいなあと、いのちの神秘に息をのむ思いだった。それでも当時のわが家の食卓がご飯と味噌汁、おかずは野菜ときどき魚だったのは間違いない。
 一人暮らしをするようになってから、これまでに鶏、豚、牛、ラムなどひと通りの肉料理はたまに自分でも作り、外食もしたけれど、水っぽかったり、臭いが気になったりで、売り場からはすっかり足が遠のいてしまった。

夏から秋へ、野菜も移り変わります

野菜ボックスを開けたら、早くも白菜が! と思ったら「秋一番のミニ白菜です」と添え書きが。見れば、葉先のほうの緑部分の色も濃く、巻き込みもふわっとしています。ザクザクと刻んでゴマ油をたらした酢醤油でからめたら歯触りよく旨そう、など思いつつ、足の速い青菜が先だわね…と。
この夏、はまったおろしニンニクとゴマ油のサラダにすることに。味つけは塩だけで。手がかからずおいしですもんね。
しっかり身がしまった秋茄子と、やはりクセのないサラダ向きの品種らしい小松菜を蒸して。

根菜も来始めました。久しぶりの大根、人参。色つやよく、なまめかしい風情です。産卵率の落ちた鶏さんも一羽丸ごと参りましので、まずはモモ肉から。皮からでる濃厚なだしで他にはだし要らず。ゴマ油で軽く炒め、根菜を入れてひと回ししたら、酒と水をたぷたぷにして、砂糖少々(小さじ1くらいにしました)、煮立ったら醤油で味つけ、やや強めの火で汁気が少し残る程度まで煮ます。

新生姜は千切りに。たっぷりご飯に炊き込みます。塩をほんの少し入れて。枝豆は郷里の新潟から送れらてきたもの。枝豆王国新潟でももうおしまいとのこと。でも夏中、毎日飽きもせず大ザルに盛って食べ続けるんだから、もういいでしょ。県外から来た人はみ~んな、恐れ入るようですよ。

根菜のうま煮が濃いめの味つけなので、汁はあっさりと吸い物仕立てに。具は水菜と干し椎茸を戻してあったもの。溶き卵でかき玉汁にしました。

本日のお茶

薬草茶(ドクダミ、クマザサ、ヨモギ他。岡山の友人から)

本日のおやつ

中村屋の薄皮饅頭(お客様のおもたせ。餡が上品な味わいでした)        

                                   料理人:よこやま


2008年 10月7日
昼めしの献立 

  • 秋野菜の温サラダ
  • 卯の花和え
  • 新生姜の醤油漬けとごはん
  • サツマイモと茄子と油揚の汁

本枯れ鰹節も「絶滅危惧種」に?

いつも削り立ての鰹節を売ってくれる鰹節店に立ち寄ると、山盛りになった削り節を店主が小袋に詰め替えています。「きれいに削られていますねえ」と感心してたら、「これねえ、見た目はそうなんだけど、おいしくないのよ」と、思いがけない一言が。手に乗せてもらったひとつまみを食べてみると、あらら、鰹節独特のじっくりと燻した香りがない。噛み締めてもうま味が染み出てこない…? 「見た目は『本枯れ』風だし、表示まで『本枯れ』ってなってるのまであるんだけど、実は違うのよ」と、不可解なおことば。

最近は、最終のかび付け工程の手前で、完成品として出回っているのが増えてきていて、しかもそうしたものが『本枯れ』として堂々とまかり通っているのだそう。この最終工程を省けば当然、仕上がりが早くなるし、仕事量も減るから、商品の回転がよくなる。「お蕎麦やさんでも、『本枯れ』節使用と謳っていて、これを使っていたりするから、汁を飲んでがっかりしてしまうのよ~」と言っていました。プロの業者から「これで充分」という注文らしく、商売といいながら店主もどこか浮かない顔です。
いまやアミノ酸入りの「風味調味料」しか使ったことがないという消費者がほとんどだし、おひたしにかけたりする削り節も、パックものというのがふつうですから。見抜けないでしょうねえ。
「こういうものが『本物』と名乗って知らない間にどんどん置き換わっていけば、いつの間にかこれが”本物”ということになっちゃってるって思うと、腹立たしいよね」
時間と人の手をかけてていねいに仕事をしていることが仕上がった鰹節にきちんと現れているから、だしとして最高位にあるのも納得と思っていたのに。う~む。鰹節の世界も後継者難というし、「経済効率」という現代の”伝家の宝刀”に抗しきれなくなったということか。いよいよ鰹節も「絶滅危惧種」入りとなるんでしょうか。

待ちわびて届いた秋野菜に感動ひとしお、細胞も小躍り

ボックスを開けるたびに、秋の色に彩られていく野菜たち。2ヶ月ぶりの人参、蕪を見つけて、しばし感動にひたります。人参は、太いものでも親指大ほどで、食べるのがもったいないような。しかし、しかし。食べたい衝動を抑えられるはずがない。この可愛らしい人参と、純白の蕪、秋キャベツは久々の温サラダと相成りました。
予測を裏切る激しい気候変動にも負けずに、逞しく秋を迎えた野菜は、どれも包丁を入れると、パキッと自ら割れるように瑞々しい肌を見せてくれるのに、またも感動。
強火でさっと蒸して、オリーブオイルを細くかけ回し、塩を振って、酢をはらりと散らすだけのサラダ。う~ぅん、ふふふっ…スタッフともども不思議な快感にしばし言葉にならず。
人参、蕪、キャベツとどれも初物なんですもん。一般市場ではいつでも手に入るだろうけれど、待ちわびて口にした瞬間、しまい込まれていた香りや味の記憶までもが蘇り重なって、感動ってこんなふうに押し寄せてくるものなんだなあなどと、いつものことながらしみじみ思います。

そうそう、新生姜もようやく届きました。このごろは、新生姜の顔をみたら、まずは即席醤油漬け。これを新米の炊きたてごはんにのっけて、味噌汁だけあれば、あと何にもいりませんって言いそうになる。ごはんが炊きあがる1時間ほど前に、千切りにした生姜を生醤油に漬けておく、というそれだけのことだけれど、滅法いけますなあ。酒の後なら、なおよろしいですね。醤油は、なるたけ厳選してくださいまし。

不当と思えるほどにお安くて、豆腐づくりの副産物なれど、何ともありがたい素材のおから。鍋に油を多めに入れて、おからによく混ぜ込んだら、火にかけて油を馴染ませ、たっぷりのだし汁と酒、塩、醤油で煮詰める。別鍋で人参、牛蒡、油揚、椎茸を気持ち甘めの味つけで煮いたら、おからへ合流。火を止めてからインゲンを彩りに少しと、長葱の小口切りをたっぷり混ぜ込み、余熱で火を通します。

産直のお気に入り味噌が切れているのだけれど、ぐずぐずと買わないままに、きょうの汁碗は吸い物仕立てで。初物のサツマイモと茄子、油揚、仕上げに、蕪菜も入れて。

本日のお茶

薬草茶(トウモロコシのひげ、ドクダミ) 

本日のおやつ

          

和菓子(塩豆大福、蓬大福、最中)

                                   料理人:よこやま


2004年12月3日
昼めしの献立

  • 水菜と卵と麩の炒めもの
  • 人参・白菜・わかめの黒ごまサラダ
  • 生姜ごはん
  • 味噌汁(大根葉、里芋、長葱、玉ねぎ)

 あかちゃんが会社にやってきました。昼飯を食べているときに、編集長の知人の娘さん…の生後まもないあかちゃんが、白いおくるみにつつまれて。名前もついたばかり。かわるがわるのぞき込み、泣いてはかわるがわる抱き…と、ひとしきり、いつもと違う空気のただよう穏やかな午後。食事につかう大きなテーブルのそばで、あかちゃんが眠っていました。

 今日はさっぱりしたものを作ろう、と、葉物を使おう、と決めてのぞんだ昼飯支度。水菜がたくさん来ていたので麩と卵とさっと炒めることに。あとは大きな人参を一本分拍子木切りにして、軽く塩をふって置いておきます。水がでたら軽くしぼり、ざくざく刻んだ白菜、わかめ、たっぷり煎って半ずりにした 黒ごまをあわせて、酢、醤油、胡麻油で。かんたんだけどおいしい。
 ごはんにはまたもや生姜を入れて炊きました。残っていた大根葉と、里芋、長葱などで味噌汁に。

本日のお茶 ドクダミ 
本日のおやつ クッキー(あかちゃんのご家族からのいただきものです)

料理人:でこ


2004年11月30日
昼めしの献立

  • 大根葉ごはん
  • 味噌汁(里芋、白菜、玉ねぎ、長葱、辛味大根)
  • 豆とジャガイモとブロッコリーの温サラダ
  • サツマイモと人参と林檎の蜂蜜煮 

 毎週木曜に菜園「野の扉」から野菜が届く。華やいだ青みに、週後半は材料を選ぶ手つきもうれしく迷い、にやにやしながら台所に立つ。
 週明け、事務所に出てくると黄色くなりはじめた物たちが目につく。収穫された野菜は日々すすんでいるのだ、足の早いものから大事に使わなければ。きょうは野菜箱の大掃除をすることにした。

 鰹だしの味噌汁に合いそうなものはどんどん入れて、里芋、白菜、玉ねぎ…と煮込む。ほっそり一本残っていた辛味大根も斜め輪切りにして入れて、長葱はいちばん最後、味噌をとく直前に。冬になると白い根ものが多くなる。冬の滋味だ。

 黄色くなりはじめた大根葉も炒めればたいがい大丈夫。香りのいい胡麻油がよく合う。きざんでおいて最後にご飯にまぜよう。

 先週の残りもの豆サラダに、あらたにゆでたジャガイモとブロッコリー(と、ひとつぽつんと残っていた小さなヤーコンも)を加え、きざんだキャベツに、バターとオリーブオイルと塩、黒胡椒をさっと合わせた温サラダ。

 そして淡路島からいただきもののサツマイモ。泥だらけの芋を洗ってあらわれ出る紫皮と、切り口のみずみずしい白さ。駄目になっていたところもあったけれど、切ってみて大丈夫そうなところをサイコロより大きめに切っていく。人参も同じように火が通りやすそうな大きさに切って、皮付きの紅玉といっしょに塩をふり、ちょっと置いておいて水が出たら蜂蜜を加えて少量の水で煮る。小さなシナモンステックをひと枝。あっというまに甘い香りがしてきた。

本日のお茶 桑の葉茶 
本日のおやつ かすてら

料理人:でこ


2004年11月26日
昼めしの献立

  • 稗、大根入りご飯 
  • 味噌汁(里芋、さつま芋、大根、昨日の玉子焼き)
  • さつま芋他野菜炒め韓国風
  • 大根ほかサラダ

冬場、からだが温まる稗と冬に向かって瑞々しさが倍加している大根入れて炊いたご飯。2カップの米に稗を2分の1カップ(好みで稗をもっと入れても)。大根はだし汁に塩、醤油少しで軽く味をつけてからお米のほうに足して、昆布も一切れ。これで炊きます。稗が水を吸うので、心もち水加減は多めに。

サラダ用のカボチャは大きめのさいの目に切って火が通る程度の蒸し煮にしたらあら熱をとり、オリーブ油と塩を軽くからめておく。大根も同じくらいのさいの目に。ブロッコリーがあったので、こちらもゆでて冷まし、今週はサニーレタスも届いていたので、こちらは手でちぎって。食べる直前にやはりオリーブ油と塩をからめ、カボチャも合わせて胡椒、酢を振って全体を混ぜ合わせる。

さつま芋を炒め物にしてみようという訳で、これはやや大ぶりの拍子木に。人参、玉ネギも大きめに切って。あと小松菜はざく切りに。ごま油を鍋に熱し、玉ネギ、人参、さつま芋と炒め、鰹生節を手でちぎって加えたら水と酒を加えて軽く蒸し煮状態に。さつま芋に火が通ったら、キムチペースト(常備もの)と醤油で味付け。小松菜を入れて仕上げる。最後にごま油で香りを。(だしガラも入れたため、見た目やや雑然とした感じですね。)

本日のお茶 ヨモギ+ドクダミ茶 
本日のおやつ チーズケーキスティック

料理人:ぎん


2004年11月22日
昼めしの献立

  • ライ麦パン 
  • トマト味野菜スープ 
  • さつま芋とリンゴの温サラダ 
  • 蕪、大根、水菜のサラダ 
  • 長ネギたっぷり玉子焼き 

千駄木に「天然酵母と国産小麦」とうたったパン屋さんを見つけ、買ってみました。使っている酵母は「ホシノ酵母」とのこと。ライ麦独特の酸味などはあまりなく、ちょっと物足りない感じではありました。

再びトマトジュース(いただきものです)の出番。カルダモン、ローリエ、シナモンスティック、ニンニクを軽く油で熱したところに、粗いさいの目に刻んだ玉ネギを入れて炒めたらすぐにトマトジュースと水を加えて煮立てる。ジャガイモ、ヒヨコ豆、さつま芋も入れ、塩、胡椒で味を調えて煮込む。野菜のだし特にトマト、ジャガイモからはいいだしが出るので、スープキューブなどなくても十分おいしい。「スープの素」をどうしても入れてしまう…という方、一度はお試しを。

使っても使っても減らない(どこからともなく?…もたらされるものもあり)さつま芋をまたもや。ゆでてマッシュにしたら塩、シナモン、ターメリック、ガラムマサラ(お土産にいただいたものが)少々で味と香りづけし、刻んだリンゴ、マヨネーズも少し足して混ぜ合わせて温サラダに。

5,6センチの長さに切った長ネギをさらに縦に刻み、卵、水、小麦粉少々とよく混ぜ、塩味をつけてフライパンで焼いて。ちょっと主食っぽい仕上がりになっちゃいました。

あと蕪と大根は薄切りに、水菜はざくざくと5センチくらいに刻んで。オリーブ油を少し全体になじむ様にようく混ぜ、、塩、酢で軽く味付けして。冬に近づくにつれ肌のキメがいっそ美しくなっていく蕪や大根。水菜のしゃっきり感も増して、心にくいまでにおいしいサラダに。
野菜を送ってもらっている野の扉の伊藤泰子さんが以前お便りに書いてきてくれたドレッシングの使い方を真似しています。油をさきに全体にまわすとコーティングされるからか、塩を振ったあと野菜の水気が出にくいよう。むろん、食べる直前に和えます。

本日のお茶 ヨモギ+ドクダミ茶 
本日のおやつ 黒糖飴

料理人:ぎん