昼めし日記


2010年 1月20日

  昼めし献立 

  • 白菜、ほうれん草、春雨のとろろとじ
  • キムチ汁(シイタケ、大根、サニーレタス)
  • サツマイモと生姜入りごはん
  • 漬物(野の扉からの白菜漬、赤蕪甘酢漬)


☆昼飯コラム☆

 熟し柿で柿ピューレ

 昨年11月だったか、手のひらにやっとおさまるくらいの大きな富有柿を1個、いただいた。
富有柿は“甘柿”ですぐにも食べられるのだけれど、まだ少し固く、もう少しもう少しと置いておいたら
つい食べそびれ、しまいにはその存在さえも希薄になっていき。そうこうするうち熟してぽよぽよに。こ
れは何とかしなくちゃ…と思うものの、じつは私、熟し柿と、ふかしたサツマイモはあまり得意じゃない
のです。サツマイモはたぶん子どものころにさんざん食べたことからきているかもしれない。
柿は、わが郷里では、この富有柿とそっくりのかたちをした柿があるが、これが極めつき(?)の渋柿
で、家では父が毎年この渋柿に焼酎を吹きかけて「さわし柿」という渋抜きにしていたから、もっぱらこ
ちらを食していた。このさわし柿がさくさくといい歯ざわりでとてもおいしく、炬燵でぬくぬくとしなが
ら何個でも食べられる気がしたものだ。
 国語の教科書のなかで、びゅうびゅうと冷たい風のなかを「熟し柿」を買いに走る子どもの話が出てい
るのを、「熟し柿」ってどんなものだろうなどと、どこか遠い風景のように描いたことを、果物屋の店先
に柿が並ぶ頃になると、なぜか思い出す。
東京で暮らすようになったら、お店では「甘柿」か「干し柿」しかないのが不思議で。もっとも田舎で
は柿とかイチジクとかビワなどは店で買う物ではなかったようだけれど。
 で、手元で熟した富有柿をどうするか。ジャムにしてみるか…柿ジャムを手づくりしたことのある人は
いそう。でも見たことはないなあ。それにパンを食べるときにあまりジャムを塗らないし。煮詰めて酢を
加えたらピューレになるかな…。
 というわけで、柿はもう“触れなば落ちん”いった風情なのでそっとホーローの鍋に移し、手で中身を
搾り出し、まずは軽く煮詰めることにしよう。5分ほどくつくつと…あ、甘っ! 酢を足してまた4~5
分…おぉ~、熟成柿酢にも似た香りがしてきた。これは使えそうですよ。
 トマトのピューレよりずっと水分が多い感じなので、柿酢のように使ってもよさそう。まずはサラダの
ドレッシングに。ジャガイモとブロッコリを蒸して、塩コショウで味付けし、オリーブ油と、このインス
タント柿酢で和えました。
この柿ピューレに味噌と酒を少し加え、火にかけてアルコール分を軽く飛ばせば、ムニエルなどのソース
にも合うかしら。

やさしく、ちから強い、山芋三昧はいかがかな。

 しばらくお休みしていた山芋が野の扉からまた届き始めました。自家採種して育てるようになったというごつごつと武骨な風体のこの山芋、すりおろしても簡単にずるりとたれてはくれず、同量くらいのだし汁でのばしたらちょうどいい濃さに。あっさりした煮びたしを卵とじならぬ、とろろとじ(卵白入りですが)にしてみました。
 蕎麦好きだけれど、蕎麦屋でとろろ蕎麦というのを注文することがめったになく、酒のつまみに、茹でた蕎麦(この場合、茹でて売っているものでも可)にすりおろした山芋(大根おろしを混ぜたりもします)をからめ、油を薄くひいたフライパンで焼いて、焦がしバター醤油をかけたら、私の中では新発見のおいしさで、これですっかり山芋使いのとりこに。

 このとろろ汁を塩、醤油で薄味に仕立て、鍋に移して火にかけ、半分くらい火が通って、もったりしてきたら、吸い物くらいの濃さのだし汁で白菜、ほうれん草、春雨、をそれぞれさっと煮て、器に盛ったところにかけ回す。
“精がつく”っていわれるように、ふくよかでこっくりとした味わいは、からだがへたりそうなときに力をつけてくれそう。我ながらおいしいじゃん! と、自画自賛です。

ご飯にはサツマイモを炊き込んで。炊きあがったところに生醤油に漬けた千切り生姜をたっぷり混ぜ合わせて。山芋ともども、寒さに縮こまったからだを中から温かくしてくれる生姜。冬の寒さに負けないからだづくりに欠かせない大切な食材ですね。シンプルに生醤油を使うこうした食べ方では、醤油もごまかしがきかないので、いい醤油を選びたいもの。

白菜漬も、赤蕪漬も、野の扉から。
泰子さ~ん(野の扉の女主人デス)、白菜の塩の加減、発酵の具合ともに絶妙ね。お茶受けなんかにしたら、あっという間に食べ終わってしまいそうなので、けちけちと食べています。甘酢が浸透して色も鮮やかな赤蕪も、美しいです。

汁には白菜キムチの古漬が入りました。熟した酸味がひなびた味わいにしてくれました。

本日のお茶

薬草茶(ドクダミ、ヨモギ、玉葱の皮…外側の
茶色くなった皮を溜めておきます)

                                   料理人:よこやま