昼めし日記


2010年 1月15日

  昼めし献立 

    • ライ麦パン(ドイツパンの店 吉祥寺・リンデ)
    • ディップ2種=人参・サワークリーム・ゆで卵・
      オリーブ/リンゴ・人参・サツマイモ・味噌

    • 温サラダ2種=大根・カシューナッツ・アーモンド+塩・胡麻油/小松菜・ジャコ天・白菜キムチ+醤油・胡麻油
    • 塩味スープ(大根・ジャコ天・蕪間引き菜)


☆昼飯コラム☆

焼き菓子がこんなにもおいしいなんて

~惚れ惚れします、オーボン・ヴュータンのお菓子~

 久しぶりに買ったオーボンヴュータンのヌガー。自分だけのちょっと秘密めいた楽しみが詰まっているような小さな姿が愛らしい。本郷で長年入り浸っている喫茶店の前マスターから弟さんのお店と聞いていたのだけれど、初めてお店に入ったのはそれから7~8年もたってから。真っ先に目に飛び込んできたのがこのお菓子と、さざれ石のような姿をしたプラリネ(らしいというのも最近知りました。ワインも洋菓子も名前がちっとも覚えられん!)。
 それまで、デパートに出ている名の通った菓子店のや、たまに入った洋菓子店で焼き菓子を買っても、今度またぜひと いうほどのおいしさに出会ったことがなく、こんなものなのかと焼き菓子類には期待しなくなっていたのだけれど、この小さな菓子たちの、感覚の扉をつぎつぎノックされるようなおいしさの攻勢に思いっきり先入観をひっくりかえされるという心地いい衝撃を味わうことに。たった1個の菓子に詰め込まれた甘さのエッセンスがもたらしてくれる幸福感に、いっしょに食べた事務所のスタッフともども、うっとりと吐息をもらしました。
 昨年秋に出版されたオーナーパティシエ、河田勝彦さんの著書『伝統=ベーシックこそ新しい~オーボンヴュータンのパティシエ魂~』(朝日新聞出版)が話題を呼んでいます。自分の進む道を見失いそうになるなど悩みながらも、実力ある菓子職人、料理人たちから貪欲に吸収しつづけたフランスでの若き修行時代から、日本の洋菓子の頂点にたつ今日までが生き生きと語られています。小麦、ナッツ、卵、果物、砂糖といった限られた素材の組み合わせから素材のもつ味の可能性を存分に引き出す丁寧な作業を通して、千変万化のおいしさを生み出す、志高いプロフェッショナルの仕事に賭ける情熱と、愚直なまでの生き方。
 焼き菓子といってもデコレーションケーキほどの大きさのものから、ひと口か2口で食べられるくらいの大きさの、のものまで多彩だけど、ひとつひとつ、どれをとっても(といっても100種類を超えるらしい焼き菓子のなかから、食べたのはせいぜい15種類くらい…)、違ったおいしさに仕上げられていて、ハッとさせられるのです。黄金率のような、糖度65%~70%という数字から半端じゃない甘さを想像すると、口に含んで感じる甘さにはいささかの押しつけがましさも、くどさもなく、ついつい幾つも手を伸ばしそうに。お菓子にこんな言い方は変かもしれないが、もちろん、ケーキも尋常じゃなくおいしい。たまぁ~に、本物の贅沢を味わいたい気持ちになったら、はるばる出かけていっても決して失望しませんよ。それにしても「甘味」って奥が深いんだなあ。
「すべては、おいしさのために」―、本文のどこかにあった河田さんのことば。お客さんが食べて「おいしい」と言ってくれる、そのことのために菓子づくりのさらなる高みをめざしていく。どんな仕事にも通じることと、襟を正す気持ちにもなります。

胡麻油、オリーブ油、いい物を少し使っておいしさアップ

 池袋・東武デパートの地下食品売り場でドイツパンの店を見つけました。「リンデ」といって本店は吉祥寺とのこと。ライ麦100パーセントのパン2種と、ライ麦と全粒小麦のパンです。いずれもサワー種で発酵させている酸味のやや勝ったガッシリとしたパン。熟成}チーズやサワークリームベースのディップなどととてもいい相性です。
旭川・麦々堂のパンに惚れ込んでいるのだけれど、よそのはどんな味かしら…?と、ちょっと寄り道。「ロッゲンフォルコンブロート」ずしっと持ち重りのするレンガのようなライ麦パン。見た目は愛想のない姿なれど、軽くトーストするとむちっとした噛み心地とライ麦のワイルドな酸味がじわり。日本だったら白米に対する雑穀。なかでも地味な稗・高黍というところ。40年近く前、明治屋で輸入のもの(真空パックだった)を見つけて以来、質実なドイツのイメージぴったりだわなどと思いながら、独特の酸味に鷲づかみにされてしまい、時々買い込んでいました。ここの店のも、なかなかおいしいです。
あわせて、ディップを考えてみます。
 人参をたっぷりすりおろして、サワークリームとゆで卵を刻んで混ぜ合わせます。塩とカイエンヌペッパーで味と香りづけ。オリーブの実があったのでそれも加えて。
 もう1種類は、すりおろしたリンゴ、これもたっぷり主役級で。そこにすりおろし人参、サツマイモ、味噌、隠し味にターメリックを振って煮詰めたもの。甘さが気になったらレモンやライムの汁を加えても。

温サラダは、短冊に切った大根と、小松菜で。
大根、小松菜をいっしょにさっと蒸して、小松菜は火が通ったらすぐに引き上げ、大根は火を止め、鍋のふたをして20秒ほどおきます。
砕いたナッツ類と大根を合わせ、上等な胡麻油をほんの少したらして全体にからめ、塩を
ふる。ゴマ油と塩だけで味わうというのは、韓国に留学していた友人が帰国したときに、牛肉を焼いたのをこうして出してくれたのをご馳走になったのが初体験。なんにでも醤油を使いがちなので、それがとても新鮮でしたね。韓国の漬物ナムルのおいしさも塩とゴマ油がうまく使われているからかな。小松菜のほうには、ジャコ天(いただきもの)と白菜キムチを刻んで酢醤油を混ぜ合わせ、こちらもごま油で風味づけ。
値段が高めでも、いい油を備えておくと、ほんの少量でおいしさが格段にアップしますよ。
スープは鰹節のだしで。長葱、小松菜、ジャコ天を具に、塩・胡椒で味つけ。仕上げに針生姜をしのばせて。
本日のお茶

薬草茶(ドクダミ、ヨモギ、玉葱の皮…外側の
茶色くなった皮を溜めておきます)

                                   料理人:よこやま