好評発売中!(2020年3月28日刊行)
ほどくよどっこい ほころべよいしょ
暗闇へ 梢をのばす くにつくり
百姓は想う 天と地の間(あわい)にて
伊藤 晃 著 / てるて イラスト
本体価格1700円 (税込1870円)
ISBN 978-4-916110-41-1
これは正真正銘、本物の百姓が地球と対話しながら紡いできた、そういう言葉による本だ。作家・梨木香歩
土から丹精された正直な作物のように、伊藤さんの言葉は実体験を通り、一滴一滴落ちてくる。それは清澄な詩、強靭な哲学となってまっすぐに私たちの心と体に届き、胸に響く。借り物の思想、虚しい言説が巷に溢れるなか、本物の怒り、絶望、そして甦る希望がここにある。何より、自然とともに生きることへの、湧き上がるような喜びが! 私たちは、簡単には消えていかない。
“公害列島”時代
工場排水で澱む海を目の当りに育ち
夢見た百姓で30年
3.11原発から解き放たれ
山川・田畑に降りた放射能という異物
共生するのはたやすいと?
命あるものと向き合う百姓は今 何を想う。
野菜とともに送られた『菜園だより』を中心に、2011年3月10日から2017年1月までの文が本書に結実しました。
著者紹介 伊藤 晃 (いとう・あきら) 1960年東京に生まれる。1991年、中学生のころから、漠然とこうなるだろうと思っていた、農業へ縁あって踏み出す。埼玉県の農業塾で、妻と一緒に、二人の子供を連れて二年間の研修を受け、1993年秋、借地借家で独立。埼玉県・寄居町で菜園「野の扉」を始める。
(本文より)
2011年3月28日
原発から発する霧と皆の喧騒とで
互いの顔も見えず 声も届きにくい中
不安や怖れとが
霧をいっそう深めています
自分の身を守るのに精一杯で
無分別になっている人もいます
霧の中 深々と呼吸をして
百姓は静かな定点となります
私たちを測ってみて下さい
2011年5月29日
放射能のいない夜
あれからあなたは 不安気で落着きもない
「放射能が聞こえる。すぐそばにいる」
と あなたは言う
私は「色々な野菜を作って、
香ばしいパンを焼こう」と言った
二人は畑を耕し 野菜と小麦の種をまいた
しばらくすると あなたはまた
「放射能がじっと見ている。聞き耳をたて、
私の肌にふれようとする」
と言う
私は「ぼくたちの時間で、放射能の
一つぶ一つぶを消していこう。
君は歌を。僕は楽しい物語を書いてみたい」
と言って 二人は眠りについた
今宵はこうして
放射能のいない夜になった
(編集担当者より)
2011年3月11日の福島原発事故で、日本列島の上空に広がった放射能はやがて大地に降り注ぎ、
地中に浸透していった。
いつしか何事もなかったように大量エネルギーを使うだけの都市の日常は戻ったが、
高濃度の放射能に覆われた故郷に取り残された大地と、命の糧である食べ物を作ってきた農民たちの深い嘆きと絶望が癒される日がくることはない。
同じ百姓として傷ついた世界をどう作り変えていったらいいのかと著者は考え続け、
ともに探してくれないかと、言葉に紡いできた。
原発にエネルギーを委ねずとも、輸出に活路をとの国策に沿えずとも、
野生生物とのせめぎ合いがさらに続くとしても、
広大な宇宙の巡りから、人間も、土中の微小な生き物までもが呼応し交感しながら豊穣な世界へと
「分岐を繰り返し、若枝が隆々と広がるように」回復へ向かう道が閉ざされることはないと。
梨木香歩さんの書籍『炉辺の風おと』(毎日新聞出版 2020/9/20)が刊行されました。(初出:毎日新聞「日曜くらぶ」連載 2018年4月1日~2020年6月21日)帯文に「大転換の時―—八ヶ岳の山小屋から<新しい日常>を探る 地球視線エッセイ」とあります。深く静かに届くものがあります。詳しくは梨木香歩図書館をご覧ください。
第5章 遠い山脈 で『ほどくよ どっこい ほころべ よいしょ』を紹介してくださっています。第4章 少しずつ、育てる2 では伊藤晃さんの「菜園たより」が引用されました。ありがとうございます。ぜひ書店さんでご覧になってくださいませ。
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