昼めしコラム

東京での枝豆初体験はビアガーデンにて

ひと昔前の夏。ビアガーデンで枝豆を頼んだら、10莢ほど乗った皿が出てきたのに驚いた。うわ~東京ではこんなにちょびっとしか枝豆を食べないのか!田舎じゃ5秒でなくなっちゃうよ。しかも明らかに茹でてからかなりの時間が経っているとおぼしく色も変わってしまってる。
 いっしょ行った仲間たちは大ジョッキにかぶりつくようにしてググーッとうまそうにビールをあけているが、枝豆には手が伸びてこない。そうだよなあ、おいしそうじゃないもん。

枝豆食い選手権なら上位入賞だったかも…

それよりさらに20年近くもさかのぼって昭和30~40年代、私が育った町では八百屋さんに枝豆が出始めるのは7月の終わりころ、まだ値段も高めで、買い物に行くたび枝豆の束を前にためらいがちにしていた母の姿が思い出される。夏の間じゅう、毎日のように大ザルに盛られた枝豆を家族でばくばくと食べていたから、東京に出てきて、そんな枝豆の食べ方をだれもしないので、友人たちと枝豆を食べるときに肩身のせまかったこと。なにしろ私の食べるスピードが速すぎるのだ。自動的に手が伸びて、ハッと手を止めることもしばしば。

茶豆に人気が集まっています

このごろは枝豆ブームといってもいいいのではと思えるほど、スーパーでもいろんな産地の枝豆が出揃っている。特に、独特の濃い風味をもつ“茶豆”に人気は集中しているようだ。実家に聞いたら、地元でも茶豆一色というから、流行というものの凄まじさに、言葉を失う。

子どものころは、おとなたちが「やっぱり“茶豆”は旨いな!」などとと話しているのを耳にして、え、枝豆はみんな青いのに?と不思議に思っていた。たしかに見た目同じようなのにときどき“旨い”のに当たるので、それが茶豆だったのではなかっただろうか。ある年の春、「今年はこれを蒔くんだ。茶豆は旨いぞ」と父が平べったい茶色の豆をいじりながら言うので、へぇ、大豆になったら茶色なんだと知った次第。今でも大豆と枝豆は違うものだと思っている人はけっこういるけどね。当時から茶豆の種は貴重だったらしい。

週末に行くスーパーでは山形特産の「だだちゃ豆」、新潟特産の茶豆が売り場のスペースを競い合い、さらに群馬、千葉産と「茶豆」一色に近い。それにしても “だだちゃ豆”のお高いこと! ばくばく食べる派にはちと手がだしにくい。 
 “だだちゃ”より少し安いのと、地元びいきから新潟黒埼、弥彦あたりの茶豆を買って帰ったら、これはもうビールにキマリです。