昼めし日記


2010年 1月7日

  昼めしの献立 

    • すりおろし人参炊き込みごはん
    • 吸い物(豆腐、長葱、油揚げ)
    • 芋三種とブロッコリーのスピードクリーム煮
    • 葱入り卵焼き
    • 「野の扉」自家製白菜漬け


☆昼飯コラム☆

焼き菓子がこんなにもおいしいなんて

~惚れ惚れします、オーボン・ヴュータンのお菓子~

 久しぶりに買ったオーボンヴュータンのヌガー。自分だけのちょっと秘密めいた楽しみが詰まっているような小さな姿が愛らしい。本郷で長年入り浸っている喫茶店の前マスターから弟さんのお店と聞いていたのだけれど、初めてお店に入ったのはそれから7~8年もたってから。真っ先に目に飛び込んできたのがこのお菓子と、さざれ石のような姿をしたプラリネ(らしいというのも最近知りました。ワインも洋菓子も名前がちっとも覚えられん!)。
 それまで、デパートに出ている名の通った菓子店のや、たまに入った洋菓子店で焼き菓子を買っても、今度またぜひと いうほどのおいしさに出会ったことがなく、こんなものなのかと焼き菓子類には期待しなくなっていたのだけれど、この小さな菓子たちの、感覚の扉をつぎつぎノックされるようなおいしさの攻勢に思いっきり先入観をひっくりかえされるという心地いい衝撃を味わうことに。たった1個の菓子に詰め込まれた甘さのエッセンスがもたらしてくれる幸福感に、いっしょに食べた事務所のスタッフともども、うっとりと吐息をもらしました。
 昨年秋に出版されたオーナーパティシエ、河田勝彦さんの著書『伝統=ベーシックこそ新しい~オーボンヴュータンのパティシエ魂~』(朝日新聞出版)が話題を呼んでいます。自分の進む道を見失いそうになるなど悩みながらも、実力ある菓子職人、料理人たちから貪欲に吸収しつづけたフランスでの若き修行時代から、日本の洋菓子の頂点にたつ今日までが生き生きと語られています。小麦、ナッツ、卵、果物、砂糖といった限られた素材の組み合わせから素材のもつ味の可能性を存分に引き出す丁寧な作業を通して、千変万化のおいしさを生み出す、志高いプロフェッショナルの仕事に賭ける情熱と、愚直なまでの生き方。
 焼き菓子といってもデコレーションケーキほどの大きさのものから、ひと口か2口で食べられるくらいの大きさの、のものまで多彩だけど、ひとつひとつ、どれをとっても(といっても100種類を超えるらしい焼き菓子のなかから、食べたのはせいぜい15種類くらい…)、違ったおいしさに仕上げられていて、ハッとさせられるのです。黄金率のような、糖度65%~70%という数字から半端じゃない甘さを想像すると、口に含んで感じる甘さにはいささかの押しつけがましさも、くどさもなく、ついつい幾つも手を伸ばしそうに。お菓子にこんな言い方は変かもしれないが、もちろん、ケーキも尋常じゃなくおいしい。たまぁ~に、本物の贅沢を味わいたい気持ちになったら、はるばる出かけていっても決して失望しませんよ。それにしても「甘味」って奥が深いんだなあ。
「すべては、おいしさのために」―、本文のどこかにあった河田さんのことば。お客さんが食べて「おいしい」と言ってくれる、そのことのために菓子づくりのさらなる高みをめざしていく。どんな仕事にも通じることと、襟を正す気持ちにもなります。

冬越しの野菜に囲まれあったか気分

 明けましておめでとうございます。
 暮れにインターネットサーバーの容量を増やす手続きを終えたあと、移行のためのさまざまなセッティングに手間取り、年が明けてからもホームページのあちらこちらと穴あき状態になってしまい、右往左往していました。休み中にホームページを覗いてくださった方たちも驚かれたと思います。どうにか復旧できましたが、まだ見落としがあるかもしれません。お気づきのことなど、ご指摘くださいませ。
年始めですので、アクティブなホームページをと、いささか怪しげな抱負を掲げて新年のスタートを切ることにいたしましょう。

 大不況! が続きます。そのなかでも出版は沈下が激しく、修復困難な「構造不況」下にありますが、つつましさにかけては創業以来胸を張って(ゴホ!)きている自然食通信社です。小さな無数の生き物に支えられた豊かな土から農家の方たちが育てたいのちの力あふれる野菜を原動力に、ていねいな本作りを心がけていきたいと思います。
 冷え込む早朝の畑から取り出された野の扉の初荷野菜が届きました。
 まずは事務所で年を越したサツマイモと届いたばかりの里芋、山芋のイモ類3種であったかいクリーム煮を。といっても実はほとんど煮込まない和えものといってもいいようなスピード煮です。やはり暮れに届いた鶏さんのガラでとったスープ少々でこの3種の芋を10分ほど蒸し煮するあいだに、バター、小麦粉、牛乳でホワイトソースをつくり、みずみずしいブロッコリーも加えて混ぜ合わせます。寒さに耐えて甘みが増した根菜のおいしさは格別。この季節ならではのおいしさです。味つけは塩コショウで。
 

卵焼きはきのう残ったのを温めて、葱ソースをかけます。
このソース、実は、熊谷喜八さん考案で、毎日新聞の家庭欄で紹介されていたものを、換
骨堕胎。ありものソースにしちゃいました。胡麻油を低温に熱したところに万能葱(忘年会の料理で残ったもの)をたっぷり入れて炒めていき、あら摺りした中華素材の山椒、塩で味付け、仕上げに醤油で香りづけしたもの。熊谷さんのはナンプラーやオイスター油なども加えてもっと奥行きのあるソースになっているのですが。すりおろした山芋、小口切りした葱(こちらもたっぷり)入れた卵焼きにこのソースをかけます。

人参のストックが増えてきて、うれしい。この日は人参をすりおろしてご飯に炊き込みます。ごく少量の塩だけの味つけ。すりおろすと一気にかさが減ってたくさん食べられるし、カロチンの赤ってきれいでそれだけで気持ちが浮き立ちます。甘味が増した冬の人参はほんの少しの塩でさらに甘く。これはおすすめ! 

豆腐、長葱、油揚げと定番材料の吸い物です。塩味ベースで、香りづけに醤油を少々。

本日のお茶

薬草茶(ドクダミ、ヨモギ、玉葱の皮…外側の
茶色くなった皮を溜めておきます)

                                   料理人:よこやま