昼めし日記


2010年 2月10日

  昼めし献立 

  • 大根と鶏肉の旨煮 →

  • ブロッコリ、蕪、レタスとひよこ豆のサラダ
  • 千切り大根と里芋の汁
  • 大根炊き込みごはん


☆昼飯コラム☆

 ”乾物”大好き派にうれしい1冊
タカコ・ナカムラさんの『”Kanbutsuカフェ”の魔法のレシピ』
                         ~乾物のススメ~

 「アラメ」って何? 聞いたことも見たこともないっていう人もいるのでは? 日本海近くの町で育ったので、食卓は魚や海草などはなじみ深い。アラメは、ちょっと見、ヒジキに似ていないこともないけれど、だいぶ違うと言えば違う。我が家では、アラメといえば、乾物の代表格。ヒジキと同じような使い方だったけど、圧倒的にこっちの出番が多かlった。しかし東京で暮らすようになって、買い物に歩いても、まったく見かけることがなく、ヒジキのことじゃないのかと言われたり。手に入らないとなると無性に食べたくなる。しかたなく、帰郷したおり、市場で買い求めていた。アラメのおいしさはヒジキ以上と今でも思っている。
 
それが、数年前、この本の著者、タカコ・ナカムラさんの主宰するWhole Food schoolで、「うわ~」、懐かしいアラメに再会。軽やかな小ぶりの器におしゃれに収まっているけれど、紛れもないアラメだったのです。
 
私にとって乾物は、”大好き”! の前に、乾物”あたりまえ”世代。あまりに身近で、たいしてありがたさもなく育ったというところ。今やヘルシーな食品のラインナップに欠かせない「麩」だって、それこそ年がら年中、食卓に上っていたんだもの。私の育った新潟市周辺で、どこにでも売られていたのは、「車麩」という、真ん中に穴のあいた、直径7~8センチもある大きなあれ。もっとも、さんざん食べさせられた昭和20年代から30年代半ばくらいまでは、食糧不足の時代。おそらく小麦の質もよくなかったのだろう(ちかごろは原料表示に「大豆たんぱく」となっているのもある)、おいしいと思って食べた記憶がないけれど。打ち豆(大豆を水に15分ほど浸したのち、木槌でぺしゃっとつぶしたもの。それを乾燥したのが、たいていの家の台所にあった)、ヒジキやアラメ、ワカメなどの海草、スルメ、干し椎茸、キクラゲ、大根の干し葉…これらは我が家では常備品で、なくなれば必ず補充されていたと思う。
 うれしいことに、この本では我々団塊世代郷愁の乾物はもとより、和食という枠から離れて自由な発想の乾物食材がふんだんに紹介されている。実業の日本社から近々発売です。
 私よりひと回りほど若いタカコさんだけど、太陽にあててうま味も栄養価もアップした干物を食卓に取り戻したいんです、と前から漏らしていたと思ったら、2007年、東京・代々木上原で開店した
Kanbutsu Cafeのプロデュースで実現。同店ではいま、30代の若い女性スタッフたちが乾物を使ったテイクアウトの料理や、スイーツに腕を振るっている。

 お陽さまのおかげですかね、ほどほどにアクも抜けた乾物って、うまみが凝縮されて、ほんと、おいしいんだから。おてんとうさまに感謝したくなるよね。

車麩(手前)と、まんじゅう麩(新潟岩船地方でつくられているので、「岩船麩」とも)。

 玉ねぎはもう、春を待ちかねて。
大根三昧の日々。冬の大根は瑞々しく、一緒にとりあわせる他の素材ともよくなじむし、味もすぐにしみこむので、仕事をしながらの毎日のおかず作りにはありがたい。丸ごととどいた鶏肉とともに…あれ、そういえば「胸」だったっけ?「腿」だったかしらと、いたっておおざっぱに煮てしまいましたが…ほんの少量でもよくだしが出てくれて、それを大根がいっぱいに吸って、まあ、なんてジューシーな! 
 上に散らした青みは、玉ねぎの芽を刻んだもの。年が明ける頃には、季節の動きをいち早く察して芽を出し始めます。玉ねぎ本体が養分を吸われて痩せていくのが、困るといえば困るのだけれど、いっぱしに「次はワタシよ」と主張しているみたいで、何だか可愛らしく、こんなふうにトッピングにあしらったり、最初の香りだしに油で炒めたりというふうに使っています。
 

 この季節、蕪のおいしさも絶品。ふるいつきたくなるいい女(男?)って、昔の小説みたいな表現をしたくなる。
 テレビの料理番組や料理本で「彩りがきれいですねえ」と、料理研究家の先生に、アシスタントが、お約束ごとのように添える言葉が、カンにさわる、というへそ曲がりの私。北国の冬の食卓なんて、地味な色ばっかしだよ~。コンプレックスに塩を塗りたくるようなこと言わんでくれ! と悪態ついてるけれど、房総の春は一足もふた足も早いし、今時は亜熱帯の沖縄はもとより、遠くメキシコや、南半球から夏の野菜が冬の店頭に出回るのだからねえ。なんとかの遠吠えかしらん。しかし、厳冬の埼玉は寄居の畑で、赤ん坊状態の苗を低温障害や霜からわずかばかりハウスで守り育て、固太りに育ったブロッコリと蕪が届いたら、真っ先に生でかぶりつきたくなるほどに魅惑的。
 さっと蒸したブロッコリの鮮やかな緑。軽く塩でもんだ雪のように白い蕪と合わせたら、目も覚めんばかり。冷え込む早朝の畑で霜を踏む農家の吐く息は白く、春はまだまだ先と思い馳せつつ、その畑の冷たい空気を運んできた野菜たちをいただく幸せを味わっています。

 ご飯にもさいの目に切った大根を炊き込んで。大根はお米の甘さも吸い込んで、ほのかに甘くごはんに馴染みます。生醤油に漬け込んだ針生姜をのせて。

本日のお茶

薬草茶〔ドクダミとトウモロコシのひげ(?…トウモロコシの実を包んでいる。
          女性のからだを守ってくれると聞いています。香ばしくて
          おいしいですよ。お隣の韓国では古くからトウモロコシの
          お茶もあります)〕

本日のおやつ

北海道、六花亭の名菓「バターサンド」
空港や駅で売られているのだけれど。
久しぶりに買ってみたら、変わらない味でした。

    

                                   料理人:よこやま