人生二毛作/「弁当の日」を提唱 竹下和男さん四国新聞 2012/04/23
竹下さんが滝宮小の校長に赴任したのは2000年春。翌年の2月初め、綾南町(現綾川町)の学校給食理事会に出席した時、熱い協議が長時間続いた。その 席で「(私は)給食ができるまでの苦労や大変さを初めて知った。給食を食べる子どもたちに大変さに気づかせるには、感謝の気持ちが湧いてくるような実践を するべきではないかと思った」という。これが『弁当の日』発想の原点である。
竹下さんのいう感謝の気持ちは、食材の命への「いただきます」と、給食を作ってくれた人への「ごちそうさま」。こんな気持ちを子どもたちに育てるのと、子どもを取り巻く環境を変えたい思いから『弁当の日』は生まれた。
献立を考え、買い出し、調理、弁当箱詰め、片付けまで全てを親の手を借りずに子どもだけで行い、自分で作った弁当を学校に持ってきて、みんなと一緒に食べる。対象は家庭科の授業のある小学5、6年生。ルールは単純明快だ。
『弁当の日』が滝宮小でスタートしたのは、01年10月18日のこと。「正直いって怖かった。『弁当の日』が原因で指を切断したり、火災などが起きたら 責任の取りようがない。当日は心配で眠れず、自宅2階のベランダから校区を見渡したほど。どこか火の手が上がれば、滝宮小校区の住民でもある私は教職を去 り、家族と行方不明になろうと覚悟を決めていた。何事も、安全策では世の中を変えられませんから」。
こうして始まった『弁当の日』1期生は、もう22歳になった。アンケートでは「食事は大変よく作る」が55%、「まあまあ作る」が15%で合わせて 70%の人が自分で作ると回答。昨年、20歳になった2期生は81%だった。「小学高学年のころ、台所に立つと料理を作る楽しさが身に付く」と竹下さん。 この数字は確かにそれを裏付けている。
竹下さんは講演で47都道府県をくまなく回り、現役時代も含め、11年間で講演回数は、間もなく千回を突破する。聴衆は延べ約10万人。『弁当の日』の 実践校は千校を超えるまでになった。著書も最新の「『ごちそうさま』 もらったのは“命”のバトン」など共著も含めて7冊。「子どもが健やかに成長できる 社会を目指して、これからも執筆と講演活動を続けたい」と力強い。『弁当の日』は、まだまだ広がりそうだ。
シニア編集室・福家弘文
竹下和男さんの著書4冊目『「ごちそうさま」もらったのは”命”のバトン』が、西日本新聞で紹介されました。
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